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トランプ政権はアメリカがこれまで築いてきたソフトパワーの資産をことごとく破壊していくつもりらしい。
それで一体何がしたいのか?
トランプにしても、DOGEを率いるマスクにしても、本当にただのビジネスマンで、お金に換算できない「価値」がいかに作るのが難しく、壊すのは容易か、わかっていないらしい。
USAIDに続き、アメリカは第2次世界大戦後からこのかた、80年近く試みてきた「自由社会のリーダー」としてのブランドを完全に放棄する。
それがVOAのシャットダウン。
権威主義国家、その多くはグローバル・サウスに属する国々の人びとに対して「自由」を訴えてきた「アメリカの声(Voice of America)」を停止する。
トランプの「マスメディア嫌い」から発した報復の第一弾。
イリリベラル・デモクラシーの確立には、デモクラシーに不可欠な要素の内、選挙によらない専門家集団である、司法とジャーナリズムを子飼いにするのが常套手段。
プーチンも、ハンガリーのヴィクトル・オルバーンもそうして今の地位を手に入れた。そのプレイプックにトランプもならうということ
先日の司法省でのスピーチは、まず、「司法当局」を掌握したことの宣言だった。
一方、マスメディアは中心が不在なので、各個撃破しながら圧力をかけ続け、マスメディアの側から、降伏し恭順を誓わせるしかないところまで追い詰める作戦だ。
もっとも、司法については、行政機関として司法省は掌握できても、最高裁を頂点とする司法府の掌握ができているわけでもない。
マスメディアについても、劣勢には立たされてはいるものの、今のところは引き続き報道を続けている。
DOGEによる行政国家の解体の傍らでどこまでメディアと司法を掌握するのか、本番はこれから始まると言ったところか。
いまのところは、破壊しやすいところから手を付けた結果、国外向けのサービスからの撤退が目立つ。冒頭に書いた通り、それでソフトパワーを失うだけでなく、今までなら援助があったからこそ我慢してきたアメリカに対する不満もこれから表面化していくことになるのかもしれない。
カナダやメキシコで起こっている反米感情がその外にも広がっていく流れだ。