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ヒラリー・クリントン、2016年大統領選に立候補を表明

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2015年4月12日、ヒラリー・ロドハム・クリントンが、2016年の大統領選に向けて、民主党(デモクラット)から立候補することを公式に表明した。

Hillary Clinton Starts to Detail Rationale for Run as 2016 Campaign Begins
【April 12, 2015: New York Times】

Clinton, Party Aim to Buck History
【April 12, 2015: Wall Street Journal】

もっともヒラリーの立候補については、当然のことと受け止められており、問題は「いつ」表明するかというところにあった。4月12日(日)に表明することは関係者の間には既に流れていたようで、たとえば、イギリスの経済誌であるThe Economistも10日(金)発売の誌面でヒラリーを大きくフィーチャーしていた。

ヒラリーの知名度はずば抜けており、今までも何度も言われてきたことだが、NYTの記事でも100%の知名度とまで強調している。

もっとも、それも当然といえば当然のことだ。1993年から2001年までは夫であるビル・クリントンが2期8年務めた大統領の夫人としてファースト・レディを務めた。ビルの任期終了後は、NY州から上院議員に立候補して当選し、2001年から2009年まで上院議員を務めた。2008年大統領選では、圧倒的優位と目されながら、民主党予備戦でバラク・オバマと最後まで争い、残念ながら敗れた。だが、オバマのホワイトハウスでは、国務省長官(Secretary of State)として、キャビネットメンバー入りし、2013年まで務めた。国務省長官は、大統領に不測の事態が生じた時の継承順位が3番目(副大統領、下院議長に次ぐ)の要職だ。

このように、ファースト・レディ、上院議員に加え、国務省長官まで務めることで、アメリカ国内だけでなく、国外でも各国政府要人との分厚いネットワークを築いている。知名度が抜群というのは、彼女の過去20年間の経歴の積み重ねを評したものだ。

これだけの経歴をもっているのだから、2013年に国務省長官を辞した時点で、辞任も2016年大統領選を目指したものといわれていた。つまり、その頃から、「いつ」立候補するかに最大の関心が寄せられていた。

では、なぜ、「いつ」が問題になるか、というと、それは、彼女の立候補いかんで、他の民主党の立候補者の登場がいつになるか、ということになるからだ。これだけの知名度を誇るヒラリーが立候補するか否かは、対立候補からすれば最大のリスクになってしまう。既に共和党からはテッド・クルーズとランド・ポールの二人が立候補を表明しているものの、民主党からは、ヒラリーが初の大統領選への立候補者となる。

2016年の大統領選は、オバマ大統領が2期8年を終えた後の選挙のため、民主党も共和党もそれぞれ候補者を選ばなければならない。それが2016年11月の本選の前に行われる予備戦で、来年の年明けから春先までアメリカ各地で、党ごとに投票が実施される。その1月に向けて、立候補者はまず、所属党内でアピールを続けていくことになる。

前回ヒラリーが立候補した2008年大統領選予備戦の時は、立候補の表明は、前年である2007年の1月末に行われていた。それに比べれば、数ヶ月遅れのスタートとなる。それも、おそらくは、共和党側で具体的に候補者が現れたことへの対処の側面が強いのだろう。もっとも、共和党は、本命の一人で、ブッシュ家から三人目の候補となるジェフ・ブッシュの立候補表明が待たれているところだ。
これもまた、随所で語られていることだが、仮に、ヒラリー対ジェフ、の対決になった場合、もはやクリントン家対ブッシュ家の対決、という「ダイナスティー対決」になってしまい、さすがに苦笑せざるを得ない状況になる。逆に言えば、ヒラリーにしてもジェフにいても、そろそろ決着をつけてもらって、ダイナスティーになるにしても、新たな一族が欲しい、というのがアメリカのメディアの望むところと思われることは多い。

ともあれ、ヒラリーの立候補表明によって、2016年大統領選に向けた動きが本格的に始まることになる。民主党内でもヒラリーと競い合う候補者が名乗りを挙げることだろう。もっともヒラリーの優勢はおそらく変わらないので、今回、民主党内で彼女と競い合う候補者は、端的にいって2020年以降の大統領選を睨んで、全米での知名度の獲得を目指した動きとなる可能性は高い。実際、ヒラリーは既に68歳であり、決して若い候補者とはいえない。むしろ、後続の若手を育てる機会が今回の予備戦の意義になるのだろう。

対して、共和党は、前回の中間選挙で上院の多数派も占め、連邦議会を既に掌握済みである。したがって、その余勢をかって大統領も共和党で占めることができるかどうかが鍵になる。それもあってか、2012年にオバマと競ったミット・ロムニーについては、早々に再立候補しないことが表明された。つまり、共和党にとっても、今回は新たな人材をアピールするタイミングなわけだ。

ところで、大統領選は、2005年にソーシャルネットワークが登場して以来、選挙キャンペーンを通じて、ITの新たな可能性が模索され、その成果が広められる機会でもある。ヒラリーもキャンペーンチームにGoogleから人材を引き抜いている。その点でも興味深く、既に2016年は、スマフォの普及を背景にモバイル選挙と言われ始めている。ITの利用ということだけに限れば、共和党から立候補を表明したランド・ポールが、彼の信条であるリバタリニアズムに則り、寄付金をビットコインでも受け付けると表明している。ちなみに通常はクレジットカードを使った寄付が多いが、ランド・ポールはPayPalでの寄付も受け付けている。

いずれにしても、ようやく2016年大統領選に向けた動きが本格化する。これは全米を挙げた巨大なイベントであり、政治もメディアもウェブもITも・・・、といった具合に様々なレイヤーで様々な動きがスタートする。同時に、大統領選は、全米の動きをリセットするタイミングでもある。特に、今回は、現職大統領の任期が切れる時であり、その分、リセット感が高まる。こうした動きについても、向こう1年半ほどの間、注目していきたい。