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メディア・コングロマリットの一つであるTime Warnerが、出版部門であるTime Inc.を2013年末までにスピンオフすることを決定した。
Time Warner Opts to Spin Off All Magazines
【Wall Street Journal: March 6, 2013】
Time Warner Ends Talks With Meredith and Will Spin Off Time Inc. Into Separate Company
【New York Times: March 6, 2013】
実は数週間前から、Meredithという雑誌出版社との間で出版部門の合併も取沙汰されていたのだが、Meredithとのディールは取り下げられ、Time Inc.のみがTime Warnerから切り離され、スピンオフされることになった。
WSJの記事によると、現状で出版部門はTime Warner全体の売上の10%を占めるに過ぎず、残りの売上は映像部門から上がっている。映像部門に比べて出版部門の売上が高くないのは以前からそうだった。だから、この出版部門の分離については、会社全体での収益の貢献が今後大きくは見込めないこと、そして、Timeに代表される出版部門を抱えていることが社会的名声として大して効果を持ち得ない、という、つまり、収益と威光の両面でグループ内に抱えておくことが難しくなったといってよいのだろう。
アメリカでも雑誌の売上は低下している。かつてはTimeとともにweekly magazineといえばNewsweekやWorld News & Reportがあったわけだが、いずれももう紙の出版から手を引いている。おそらくTimeについてもスピンオフすることで、紙とウェブとの間の関係、あるいは移行を主体的に行えるようにすることが選択されたのだろう。多くの日刊新聞がウェブへの関与、移行を既に試みてきており、その中で成功者も失敗者も出てきているからだ。
Time Inc.には、ニュース誌であるTimeの他に、スポーツ誌でSports Illustrated、ビジネス/マネー誌でFortune、Moneyという知名度の高い雑誌がある。これらを核に据えてスピンオフすることで、独立した公開企業としての可能性を探ることになる。
(日本人にとっても、Timeは時事英語の代名詞として長らくあったわけだが、それもウェブが普及することで様々なニュースサイトが登場することで、Timeの独占的地位は揺らいでしまった。そもそも、随分前から、そのTimeの文体も報告文形式の味気ない英語になってしまった、という評価が広まっていた。)
このTime Inc.のスピンオフで、Time Warnerは実質的に映像部門だけとなる。しばしばメディア・コングロマリットの一つとして紹介されてきたTime Warnerだが、既に音楽部門のWarner Music Groupは2004年に、書籍出版部門であるTime Warner Book Groupは2006年に、ケーブル事業部門であるTime Warner Cableとオンライン部門であるAOLは2009年に分離されている。むしろ、ここから先のTime Warnerは、映像制作(映画、ドラマ等)とケーブルによる映像流通・販売(TNT、TBS、HBO等)と映像部門だけになり、より直接的にインターネットやウェブが当たり前になったメディア環境のもとで、映像事業としての最適化を図っていくことになるのだろう。実質的には、ケーブルとウェブの共存、ないし、ケーブルからウェブへの移行、をどう首尾よく達成するかが当面の課題になる。そこに焦点を当てることで引き続き収益を確保しようと試みる。
それにしても、AOL Time Warnerの時代から随分遠くに来てしまった感は否めない。
同じメディア・コングロマリットと言われたDisneyが単なるメディアの寄せ集めではなく、経験やエンゲージメントを核に据えて拡大・成長し続けているのとは好対照に思えてくる。News Corp.がWSJを含む出版部門のスピンオフを検討中でもあるという。
既に2020年代に向けて、メディア・コングロマリットの再構成の時代に入ったということなのだろう。