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ウェブサービスの後押しで好転し始めた世界の音楽ビジネス

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新たに発表された国際的な統計によると、99年以来、減少続けてきた楽曲=音楽コンテントの産業規模がデジタルに対応することで、ようやく回復し始めたという。

Music Industry Sales Rise, and Digital Revenue Gets the Credit
【New York Times: February 26, 2013】

Music Industry Grows First Time in a Decade on Digital Adele
【Bloomberg News: February 26, 2013】

上の記事によると、レコード音楽産業の国際団体である IFPI(the International Federation of the Phonographic Industry)によれば、2012年は国際的な音楽市場にとっては転機となった年であり、ウェブを通じたデジタル配信によって、回復基調に入り始めた年と位置づけられるという。(ちなみに、IFPIには日本レコード協会も加盟している。)

状況が確かに変わったと思えるのは、NYTの記事中の引用で、SMEの国際セールス担当のエグゼクティブが、「デジタルは音楽産業を殺している」と言われてきたが、今ではその逆で、「デジタルは音楽産業を救っている」と答えているところだ。

デジタルといっても、今更CDやMDのようなパッケージのことをいうのではなく、ウェブを通じたオンラインサービスのことをいう。その担い手としては、ファイルを購入しダウンロードするサービスである、AppleのiTunesは当然として、サブスクリプションサービスであるSpotifyやRhapsody、Muve Musicなどによって、ユーザーの利用の深度に応じて売上も上がるようになってきているという。これに加えて、アメリカであればPandoraのようなラジオ型のサービスも生まれている。

それにしても、どうもこの記事でのdigitalという使い方を見ると、音楽関係者にとっては、digitalとはウェブないしオンラインのことを指しているようだ。CDもデジタルではないか?という疑問は当然湧くのだが、どうやら、CDは、デジタルであっても、音楽産業的にはLPのような「レコード盤」というカテゴリーに収まっていたようだ。これはこれで興味深い、言葉の使い分けだと思う。そして、ユーザーならびにウェブ関係者の感覚と微妙に語感がずれているところのように思える。

ともあれ、ナップスターの登場以来、そのCDを含む「レコード盤」ビジネスモデルを殺害し続けてきたデジタル=オンラインの存在も、しかるべき配信方法をビジネスモデルとして組み立て、見出すことで、きちんと売上をあげるフェーズに入ったということなのだろう。

上の記事によれば、国際的に見ると、音楽売上の34%がデジタル=オンラインから上がっている。もちろん、これは国際的に集計した結果なので、国別に見ればばらつきがある。それでも、アメリカ、インド、ノルウェー、スェーデン、では、売上の半分がデジタル=オンラインからのものになっているという(国の規模で言って、アメリカが市場規模では最大だろう。その一方で、BRICsの一角で、将来は中国よりも人口の多い国になるといわれるインドでのシェアは未来像の一つを与えることになると思う)。

少なくとも売上の減少が止まり、今後、好転する方向にあるように思えてきたことは業界にとってもユーザーにとってもよいことなのだろう。互いに疑心暗鬼にならずにすむからだ。

もっとも、その新たな売上をもたらしてくれるサービスが、iTunesやSpotify、あるいは、Pandoraのような、業界の外から生じたことは、おそらく、今後、ビジネススクールなどのケーススタディの材料として使われていくようになるのだろう。

ちょうど今年のSWSWでナップスターを扱った独立系の映画が上映されるのもタイミング的に合致していて興味深い。

2013年は様々な変化が起こりそうな予感を感じさせる年だが、どうやら世界の音楽産業もその一つとなりそうだ。