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先日発表されたピューリツァー賞で、はじめてnon-profitのオンラインサイトが受賞を決めた。
Washington Post Leads in Pulitzers
【Wall Street Journal: April 13, 2010】
The Post wins four Pulitzers; Bristol, Va., paper wins for public service
【Washington Post: April 13, 2010】
受賞したのはProPublica。上の記事にあるように、New York Times Magazineと共同で受賞した。
以前のエントリーでも触れたように、ProPublicaはnon-profitでオンラインの調査報道(investigating report)を専門とする機関。
調査報道とは、主に政府や大企業の不正に照準して時間をかけて実態を明らかにするタイプの報道活動。最も有名なのはウォーターゲート事件を取り上げたWashington Postによるもの。Bob Woodwardを一躍ジャーナリストの神にしたこの調査報道は確かにそれ以後のアメリカの政治状況を大きく変えたという点でアメリカ史に残るもの。Bob Woodwardに憧れて報道記者になったという人は多いという(実際、そういう報道プロデューサーの講演をNYで聞いた)。
このようにアメリカのジャーナリズムの中核であり良心とも呼べる調査報道だが、ここのところ、徐々に手薄になってきているというのが一般的な理解だ。というのも、昨年から顕著になったように現在、アメリカの新聞社は経営不振にあえぎ、やむなく記者を含めたリストラを継続中で、長期にわたる取材活動が必要な調査報道チームがその対象になりやすいからだ。
ProPublicaの受賞の背景にはこうした時代状況がある。オンラインであることやnon-profitであること以上に、調査報道という分野の現状を歴史に刻むという点で、ProPublicaに注目が集まったと見ることもできるのではないだろうか。
アメリカのジャーナリズムの変質の兆候となるような、その意味でメルクマールとなる受賞だったと思われる。
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受賞者の詳細は以下が詳しい。
2010 Pulitzer Prize winners and finalists
【Washington Post: April 13, 2010】
2010 Pulitzer Prizes for Journalism
【New York Times: April 12, 2010】
2010 Pulitzer Prizes for Letters, Drama and Music
【New York Times: April 12, 2010】