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April 12, 2010
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junichi ikeda

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Washington Post、コメント匿名性を再考する。

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Washington Postがニュースサイトのユーザーからのコメントについて、従来堅持してきた匿名性維持の原則を見直す方向にあるという。

News Sites Rethink Anonymous Online Comments
【New York Times: April 11, 2010】

インターネット上で「情報はfree=自由であることを望んでいる」ということと同じ程度に、インターネット上でanonymous=匿名であることは、インターネット初期からのネットのルールと見なされてきた。

上の記事によれば、Washington Postは向こう数ヶ月の間に、匿名性原則に関して見直しを図るという。

考えられる対処方法としては、たとえば、ニュースサイトは事前登録制にして、ユーザーが見る分には引き続き匿名のコメントであり続けるが、サイト側はコメントユーザーをトラックできるようにすることが挙げられている。その上で、ユーザーからランキング投票を集めて、その結果でコメントの掲載順序をつくる。

このランキングシステムは、リベラル系のブログアグリゲートサイトであるHuffington Postが先行して採用しようとしているとのこと。HuffPoの主催であるArianna Huffington女史(この人はリベラルの論客として有名)によれば「これはユーザーの教育プロセスだ」と、とてもリベラルっぽいコメントをしている。

ニュースサイトで匿名コメントの見直しをするのは、荒らし的な野卑なコメントをできれば避けて、コメントを含めたニュースサイトへの広告出稿のことなどを考慮してのようだ。とはいえ、「情報は自由」「表現は自由」を原則的に重視するアメリカの報道機関の場合、自発的に検閲行為のようなことはしたくないこともあって、できればユーザー同士のランキング、つまり承認行為によって状況を好転させたいと考えているのだろう。検閲的行為は自分たちの報道信条にも関わるので。ここは難しいところだ。

それにしても、freeといい、anonymousといい、従来のインターネットではデフォルトのルールのようになっていたものの見直しが少しずつだが確実に行われてくるようになった。

アメリカの法制度は、こうしたルールを政府が頭ごなしに決めるようなことはしない。むしろ、一つ一つの法律事件を通じて一歩一歩状況のルール化を進めるのが通常。しかし、裁判にならない限り司法を通じたルール化、あるいは問題提起はなされない。

となるとWashington Postなどの報道機関はできるだけユーザーとの緩やかなやりとりをしながら共有できるルールを醸成していくということになるのだろう。そのプロセスは、報道機関特有の現象になるだろうから、しばらく気にかけておきたい。

それにしても、微妙なルール形成方法だと思う。