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噴出してきたNet Neutrality政策の再考を促す動き

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October 19, 2009 06:56 jst
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FCCのGenachowski委員長が推進に積極的なnet neutrality政策に対して、再考を促す動きが連邦議会議員の間で見られるようになっている。

‘Blue Bell’ Democrats Ask FCC to Tone It Down on Net Neutrality
【Wall Street Journal: October 16, 2009】

FCC Chief Seeks Broad Open-Internet Rules
【Wall Street Journal: October 14, 2009】

これは、10月22日に予定されている、FCC委員(Genachowskiを含む5人)によるnet neutrality推進案の検討会を目前に控えた動き。

通信政策に長らく関わってきたJohn McCain上院議員らGOP側からの動きだけでなく、Genachowskiが所属するデモクラット側からも、下院議員から拙速な導入に再考を促す動きが出ている。

記事中では、デモクラットの反対者を、“Blue Bell”と呼んでいるが、これは、南部選出のデモクラット議員を中心に構成されるcenter-right寄りの政策集団である“Blue Dog”と、80年代半ばに分割される以前に通信事業を独占していたAT&Tの通称“Ma Bell”をかけたもの。だから、“Blue Bell”で「通信事業者支持で規制緩和支持のデモクラット」というぐらいの意味になる。つまり、あれこれ政府が規制を入れて産業を先導することをよしとせず、事業者の間の競争を好むようなデモクラットの集団、ということ。

主な争点は、先日も記したように、Genachowskiが導入を考えている、無線・有線を問わずnet neutrality政策を原則とする動きの是非。

FCCで想定されている動きとしては、GenachowskiがFCC外部での講演会で明らかにしたにすぎないnet neutrality原則を、まず、FCC委員の間での共通見解にする手続きを10月22日の会合で行う。つまり、net neutrality原則を、Genachowskiの個人的な見解からFCCの公式見解にする作業を行った上で、来年春から夏にかけて、具体的なFCCルールとして発表する。これが、いまのところ、Genachowskiが想定しているスケジュール。

もともとは、連邦議会がFCCに対して、全米でのブロードバンド配備計画を来年2月までにまとめるように、という指示を出していたため、このようなスケジュールになっている。

Blue Bellのように、デモクラット内部からもnet neutralityに対する疑問が提出されることからわかるように、実際の政策の詳細を詰める段階になれば、異論反論は当然のことながら噴出する。アメリカでは、党議拘束がないため、議員が政策争点に応じて適宜coalition(連繋)を組んで見解の集約をしていく。また、大統領制であって議院内閣制ではないため、立法部(=連邦議会)と執行部(=大統領府ならびに独立委員会)の意向が事前調整されることがない。こうした事情から今回のような反対声明が公式に提出されることになる。

裏返すと、Genachowskiが公の場で私的見解としてnet neutrality原則に触れていたのも、関係者からの意見を事前に集めることを意図していたと考えられる。アメリカで「議論の透明性」というときは、このように公式の場で私的見解として意見表明をし、ジャーナリズムによる報道を含めて、賛成・反対の意見が公に表明されることをよしとする傾向がある。その結果、複数のマスメディアが総体として議論のためのアリーナとなることが多い。

いずれにしても、まずは、10月22日のFCCの検討結果に注目したい。