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単なる携帯電話メーカーから脱却し、次世代情報端末市場での地位を確保しようと巻き返しを図っているNokia。その一環として参入を表明したnetbookについては、OSとしてLinuxを採用すると発表した。
Nokia to Roll Out Phone Based on Linux Software
【Wall Street Journal: August 28, 2009】
Appleが必ずしもopenとは言い切れないproprietary system(製品のコアを秘匿し私有性を確保するシステム)を維持しているのに対して(たとえば、『インターネットが死ぬ日』のJonathan Zittrainはこの点でAppleを批判している)、anti-Appleの立場を取り、ソフトウェア開発事業者が動きやすい開発システム(開発生態系)を用意するつもりであるという。
このように、次世代情報端末市場における仮想的としては明確にAppleに照準を合わせており、Appleが開発中というタブレットコンピュータについても、Booklet 3Gという製品で楔を打つ予定。
Nokia Takes Aim at Apple
【BusinessWeek: August 27, 2009】
さらに、銀行制度がきちんと整備されておらず、banking accountを持たない開発国のユーザーを対象に携帯電話端末を使った個人間の決済サービスであるNokia Moneyを提供する。
Nokia Targets Mobile Financial Services
【BusinessWeek: August 27, 2009】
これは、Nokiaが世界中に研究開発拠点をつくり、それぞれの国の実情にあわせた商品開発することに尽力しているからこそ出てくる発想だと思う。
「眠れる巨人」というのはいささか誇大表現かもしれないが、世界市場の約4割のシェアという事実を梃子にして、本気で次世代情報端末市場に乗り出せば、社会の様々な標準やルール作りにまで、Nokiaは大きな影響を及ぼすことができる。
NotebookでのLinuxの採用も、Nokiaが本気になって普及を図り、LinuxベースのOSが次世代情報端末の標準OSになったとすると、これは世界中の経済構造を変えるほどの意義を持つはず。Open Source Movementが主流になる可能性も出てくるわけで、そのインパクトは計り知れない。
また、Nokia Moneyのようなサービスは、利用環境、消費環境が国によって全く異なることを十分理解した上で、それでも市場の担い手として進出する、という決断がなければ出てこない発想だと思う。決済システムは社会基盤の一つだから、中途半端な参入では、参入先の利用者のみならず社会にまで甚大な影響を与えてしまうからだ。
いずれも、Nordic Modelを地でいくNokiaだからこそ選択できる策のように思える。社会的意義の大きさを考えると是非ともがんばって欲しいところだ。