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Ben Bernanke氏がオバマ大統領によって、Fed Chairmanに再指名されることが内定した。アメリカの各紙が伝えている。
Obama to Reappoint Bernanke as Fed Chief
【Wall Street Journal: August 25, 2009】
Obama to Nominate Bernanke to 2nd Term at Fed
【New York Times: August 25, 2009】
Bernanke to Be Reappointed as Fed Chairman
【Washington Post: August 25, 2009】
現在進行中のアメリカ経済回復策の見通しを不透明にしないというのが最優先された結果のようだ。
今年に入って、緊急事態とはいえFedの役割や権限が増大していく中で、Bernankeに対する批判は、GOP、デモクラット問わず、連邦議会で起こっていた。Bernankeは、黒子が原則のFed Chairmanとしては例外的に、自身の判断を人びとに直接説いて回るという、コミュニケーション戦略まで採ってきた(このエントリーを参照)。
Bernankeの後任としては、Lawrence Summersの名前が何度も上がっていたわけだが、彼の場合、クリントン時代の財務省長官であるRobert Rubinとの繋がりの強さから、今回は見送られたようだ。
現在、アメリカの金融政策の現場では、Rubinに代表されるGoldman Sachsと連邦政府(財務省とFed)との近さに批判が当てられていて、Rubin(とGreenspan)とともに、クリントン時代の金融財政政策を担ったSummersでは、上院での承認過程の際、いたずらに質問の幅を広げてしまい、痛くない腹まで探られることも起こりかねないからかもしれない。
いずれにしても、デモクラット寄りの人物を選ぶことは、承認過程のことを考えると得策ではないことになる。GOPの中でも、ブッシュ政権最後期の、Paulson財務長官とBernankeによる金融システム救済のために財政出動したことを快く思っていない人は多いからだ(その意味では、ブッシュ政権は、ニクソン政権同様、デモクラット的な「大きな政府」に傾斜したとして、Conservatismからすると自殺行為だという批判が、GOPの中からもでているくらい)。
それに比べて、Bernankeであれば、まかりになりにも最初の指名はGOPが行ったわけで、続投のため上院承認過程をなんとかやり過ごせるというように判断したのだろう。上述のように、Paulson & Bernankeの判断で、金融システム救済のための財政出動をした時点で、既にデモクラット的な政策決定をしてしまっているわけで、この点では、デモクラット側の議員もなんとか了承させられる、という判断でもあるのだろう(もちろん、ヘルスケア改革が難航中のところで、不安定要因を増やしたくない、という考えもあったと思われる)。
こうして、市場に対しては、良くも悪くも、予測可能性を早めに提供することを最優先したわけだ。
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もっとも、デモクラットとしては、その背後で、Bernankeの次の人事を考え、足場を固め始めている。というのも、ニューヨーク連銀のCharimanに、アメリカ最大のLabor Union(労働組合)であるAFL-CIOのNY支部トップであるDenis Hughes氏が正式に指名されることになったからだ。
Labor Leader Named Head of New York Fed
【Wall Street Journal: August 25, 2009】
前任者のStephen Friedman氏はGoldman Sachs出身で、ニューヨーク連銀のBoardメンバーの時のGoldman Sachs株の購入について疑惑が取り沙汰されたため、ニューヨーク連銀のChairmanを退いていた。Denis Hughes氏がActing Chairman(暫定議長)を5月から務めていた。
ここのところの、FRBならびに財務省とGoldman Sachsとの関係の深さに対する批判をふまえて、デモクラットよりの人事になったということだろう。
ところで、ニューヨーク連銀のNo.2には、Columbia Universityの現President(あえて訳せば「総長」もしくは「学長」)であるLee Bollinger氏が就いている。順当に行けば、次期ニューヨーク連銀トップ、ということになる。改めて、Columbia Universityとニューヨークのビジネス・サークルの繋がりの強さを実感した次第。
そう思うと、先に、FRB擁護の論考を、Columbia Business SchoolのDean(これもあえて訳せば「学部長」)であるGlenn Hubbard氏がFinancial Timesに寄稿していた。
The Fed’s independence is at risk
【Financial Times: August 20, 2009】
留学中にも感じたことだが、Columbia UniversityとNew York City、あるいは、Wall Streetとは、浅からぬ関係がある、ということなのだろう。
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以上見たように、DCで金融システムを監視する役割はBernankeを続投させ、そのことで政策の継続性を強調しながら、実際に市場介入の任に就くニューヨーク連銀はデモクラット寄りの人物で固めていくことで、現場の掌握を行っていくという、二本立ての動きということになるのだろう。
Bernankeもコミュニケーション戦略に手を尽くしたのは成功だったということだ。となると、今後は、Fedの対外的コミュニケーションも比重が上がっていくのかもしれない。