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11月の中間選挙に向けたニューヨーク州の予備選で、マムダニ市長の推薦した、いわゆる「進歩派(プログレッシブ)」の候補が3人、勝利し、ちょっとした話題になっている。
ニューヨーク・タイムズ(NYT)の報道では、早くもマムダニのことを、次代の民主党の「キングメーカー」とも呼び始めている。
要するに、右派/保守/共和党における「トランピズム」に対抗するものとして、ようやく「マムダニズム」とでも呼ぶべき政治現象が起こってきた!といいたいようだ。
NYTについては、2024年大統領選におけるバイデン降ろしの大合唱を始めた報道機関として、その「進歩性」を隠さなくなったので、だいぶ差っ引いて受け取る必要はあるが、少なくともNYTの本拠地であるマンハッタンの空気は、以前なら極左(といっても欧州的にはただの社会主義だが)扱いされていた進歩主義が、民主党内の穏健派に代わるものとして大いにせり出してきた、と主張したいようだ。
従来の(民主党も認めてきた)アメリカからの離脱、方向転換としては、マムダニが市長選の際にいっていた「アフォーダビリティ」だけでなく、今回の予備選では、イスラエルからパレスチナに支持を移すという姿勢が肯定されてきた、ということのようだ。
トランピズムのような、アメリカ人のプライドを賭けた「アメリカ・ファースト」で、なし崩しに「帝国的な侵略志向」を肯定するのではなく、そこに一定の歯止めをかけるべく、イスラエルからパレスチナへと支持の方向性を変えようとする。
それはある意味で、アメリカ全土の中でも特異的に多民族性が高く、その上、欧州由来の思想や文化の受け入れ先として機能してきた(ある意味、江戸時代の出島のような特権的文化拠点)大西洋に向かった港町として、自覚的に、ヨーロッパで練られたリベラル・デモクラシーの思考を実践しようという姿勢といえる。
さらにいえば、それをニューヨークの住民が、意識的に選択するようになった、ということと解釈していいのだろう。少なくともNYTはそのことを全面的に押し出すことに躊躇していない。
それを多分今後、「マムダニズム」として売り出したいのだろうな、と。
もちろん、当面の間は、バーニー・サンダースやAOCが属する民主的社会主義(democratic socialism)を使うのかもしれないけれど。
ただ、この“democratic socialism”の“d”が“D”に変わる、つまり、「民主党内の社会主義=進歩主義肯定派」を意味するのも近いのかもしれない。そして、その通称が「マムダニズム」となる。「マムダニズム」とすることで、「社会主義」という、一般的なアメリカ人にはまだ抵抗のある(と民主党の年寄りの政治家や工作員が信じている)表現を迂回し脱色することが出来るのかもしれない。ちょうど、トランピズムが、極右の思想や活動家をロンダリングするのに役立ったように。
今のところ、「アフォーダリビリティ」という言葉も、トランプが利用をためらっているため(というか嫌っているため)、マムダニのいい出した言葉の記憶が残っている。うまくやれば、これを「MAGA」と同じような標語にすることができるのかもしれない。
MAGA的な標語という点では、「アフォーダビリティ」の狙いからすれば、“Make America Happy Again”とでもいいたかったところだけど、残念ながら「MAHA」はすでにケネディ・ジュニアが使ってしまっていた。
ともあれ、マムダニという若いニューヨーク市長に、意識の高い民主党の支持者たちは、夢を託したい、というところはあるようだ。とはいえ、彼がムスリムであることは、あいかわらず、ニューヨークやニューイングランドを超えたアメリカでは、まだいろいろと敷居が高いものだろうが。
その意味では、ニューヨークの多民族性が、マンハッタン島自体が巨大な「タワマン」的な密集地帯だから実感できることで、その「過密都市」の実感をどこまで他のアメリカの住人が、我がことのように実感できるのか? それが相変わらず、鍵になるのかもしれない。
そういう意味では、アメリカの民主党の不幸は、NYTが多国籍都市NYにあることなのかもしれない。シカゴ・トリビューンやLAタイムズが、NYT並に全米に向けた発信力をもっていたら、アメリカの「プログレッシブ」のイメージも変わっていたのだけはないか。
その点で常々気になっているのが、マブダニやAOCと同様、民主党の中では「プログレッシブ」のひとりとみなされているエリザベス・ウォーレン上院議員(マサチューセッツ州)が、自分のことを決して「ソーシャリスト」ではなく「キャピタリスト」といい続けていること。
それはきっと、彼女が南西部のオクラホマ州出身であることとは切り離せない、何か直感的な「生き方」に関わるアメリカの文化(市民宗教?)に大きく依拠したものだと思っている。
とはいえ、そのウォーレンも今見たら今年77歳。彼女の世界観もすでに20世紀のものだとすれば、世代的にはやはりマムダニやAOCが語る言葉を、新しい民主党、若い民主党の言葉として採用していくほかないのかもしれない。
ニューヨーク州選出の下院議員の予備選は、全米で見ればイチ・ローカルの話でしかないけれど、ともあれ、マムダニ以降、今までとは毛色の違う考え方が民主党の支持者の間で生まれ始めているのもまた確かなこと。
それが、今年の中間選挙を経て、全米で芽吹くのかどうか。気になるところだ。