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この11月のアメリカは、10月と比べて、とてもアップダウンの激しい月となった。その理由は、11月4日の選挙で、民主党が快勝したことが大きい。
ヴァージニアとニュージャージーの2つの州知事戦とニューヨーク市長選で勝利し、カリフォルニアでは、来年の中間選挙に向けて選挙区割りをし直すか否かの州民投票で賛成が6割近くとなり、採択が決まった。
この民主党の進撃で、トランプ2.0のMAGA基盤が緩み始めた。端的に、MAGA議員の筆頭だったマージョリー・テイラー・グリーン(MTG)下院議員(ジョージア州)が、来年1月5日をもって辞任することを発表した。MTGは、10月の連邦政府停止(シャットダウン)以来、トランプ2.0のホワイトハウスが、ガザやウクライナなど、もっぱら国外の外交案件ばかりに力を入れて、アメリカ国内の経済や医療保険など、いわゆる「アフォーダビリティ」論議から離れていることに不満を示し批判を加えていた。
実際、ここのところ、トランプ2.0が関わっているのは国外のことばかり。ガザやウクライナでの停戦の仲裁に入るだけでなく、ベネズエラとの間のカルテルによるドラッグの密輸を理由に正式に戦端を開きそうなきな臭い状況になっている。その一方で、サウジアラビアとはAI関連を中心にアメリカ国内への投資を中心に強固な関係を築こうとしている。だがこうした動きがMTGには、全くMAGAの公約を図っているようには見えない、ということだったらしい。
MAGA=Make America Great Againは、ドナルド・トランプが2015年に大統領選に立候補する際に使った言葉だが、もともとはレーガン大統領が言っていたものを流用したものだった。それでも今年ですでに10年。この10年のアメリカは、賛同するにせよ、反発するにせよ、常に「MAGA」という言葉とともにあった。トランプが一度大統領から退いたあと、その4年後に大統領に返り咲いたため、なんとなく現在進行中の標語のようにいまだに感じてしまうが、すでに10年の歴史が過ぎている。
にもかかわらず、MAGAは達成されたのか?というと、それは結構こころもとない、というのがMTGの最近の言動に込められたニュアンスなのだろう。別に政治公約がただの空約束になることは珍しいことではないが、しかし、そのMAGAの強固な支持基盤から選出されたMTGからすれば、いつになったらアメリカは再び偉大になるのか? 自分の選挙区の支持者からふと問いかけられることもあったのかもしれない。MTG自身、その疑問を口にしてしまったのかもしれない。
繰り返しになるが、すでにトランプがMAGAを口にしてから10年が過ぎた。問題は、このMAGAという言葉が流布することによって、まずMAGAの前提となる「アメリカはもう偉大ではない、ダメな国になってしまった」という空気をアメリカに広めてしまったのではないか、という気がしてならない。
もちろん、そう認識したうえで国としてV時回復?できれば、それはMAGAとして予定調和となって素晴らしいのだろうが、困ったことに、何をもって「グレイト」なのかはっきりしないまま、いまだに言葉だけが先行している感が否めない。少なくともアメリカ市民は、トランプ2.0になったからといって暮し向きが良くなったわけでもないことにジリジリと不満を貯め始めているようだ。それは、ここに来て政権支持率が4割を切るところまで落ちてきていることにも現れている。
その意味では、MTGの自発的退任が、いわゆるMAGAリパブリカンの終わりの始まりを示しているのかどうか、とても気になる。2016年にトランプが当選したとき、一体どうして?と疑問の声がそこかしこで上がり、しかし、その後の分析的な説明の増大で、いつの間にか、なるべくしてなった歴史の必然、運命的な結果として受け入れられてしまったように思える。だとすれば、今回もまた、いつの間にか、崩壊、というか変容が始まり、必ずしもトランプではないMAGA、トランプを必要としないトランピズムの「2.0=第2段階」が始まるのだろうか?
「(トランプの)MAGAから10年」は、時代の区切りを理解するためにも、一度振り返ったほうがよいタイミングにあると思われる。