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February 05, 2019
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junichi ikeda

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“Pando”という一つの木が生み出した森のような生態系を襲う危機

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February 05, 2019 17:39 jst
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昨日紹介した中国のグリーンエネルギーの次に扱われたニュースが、以前、WIRED Book Reviewで取り上げた『植物は〈未来〉を知っている』(第12回)のよい事例のような内容だったので、ちょっと取り上げておこう。

Earth’s most massive living thing is struggling to survive
【PBS NewsHour Weekend: February 3, 2019】

ユタ州に広がる“Pando”と呼ばれる森を紹介したもの。

今、「森」といったものの、この森に見える木々は、実は全部、地下の根でつながっていて、つまり一つの木であるということ。任意の木を選んでDNA検査をすると、すべて同一のDNAが検出されるのだという。

繁殖・・・というか増殖は、根から新たに若木が生まれ、それが十分大きな育ったところで、老木となった部分が枯れていくことで、「一つの生命」としての木が生命をつないでいく。

要するに、森と思われた部分はすべて一つの生物=木であって、その木の新陳代謝によって、森とみまごう一つの生態系が維持されていく。

いやー、植物ってホント、スゴイ!って話。

ちなみに、“Pando”というのはラテン語で“I spread.”ということだそうだ。
つまり「我、広がる」ということ。

では、どうして、その“Pando”がニュースになっているのか?というと、今、存亡の危機が訪れているからだ。

というのも、先ほど、述べたように、この木の繁殖/増殖は、根から若木が生まれることでなされるのだけれど、その若木が十分育つ前に、動物たちに食べられてしまっているから、ということだ。若木が育つ前に食べられてしまって、いまや、年寄りの木しか残っていない、ということ。

若木を食するのは、主にウサギやシカなどの草食動物なのであるが、そうした草食動物の天敵である肉食動物が、人間による狩猟や開発によって年々数を減らしている一方、“Pando”の地区は観光地として禁猟区扱いになっており、結局、“Pando”にやってくる草食動物を脅かす存在がいなくなってしまっている。

簡単にいえば生態系のバランスが崩れてしまったから、ということだ。

だったら、とりあえず数を増やした草食動物たちの数を減らすべく狩りをすればいいのでは?と思うところだが、それもまた決断が難しいようだ。農作物を荒らす動物であれば、たとえば害獣指定して、一定数を狩猟対象にするということも可能なのだろうが、そのためには、この一見「森」にみえる“Pando”が、実は一つの生命体で、この植物が潰えたら、“Pando”が根を張っている領域の生態系自体が、文字通り「根こそぎ」破壊されてしまう。その意味を人びとに十分、周知させないことには、社会的判断や合意はなされにくい。

生態系の問題は、公の問題だからこそ、公の理解や了解がどうしても必要になるということだ。

もちろん、この“Pando”による「疑似森林」は、ニュースで取り上げられた土地に限ったものではなく、ユタ州の他の地域、あるいはロッキー山脈全域にも同種のものが散在しているのだという。そして、若木が育つには、最低でも十年単位でものを考える必要がある。

となると、近い将来のある時点になって、あちこちで次々と(疑似)森林が消えていくという事態も生じかねないわけだ。

このニュースから学べる教訓は、このように意外と大きい。加えて長期的視点を要するものだ。同時に、植物を捉える際の視点の有り様も教えてくれる。