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未来の大都市圏はGoogleとBloombergが構想する

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都市生活の向上を目指すSidewalk Labsという企業がGoogleの出資の下で設立されることになった。Sidewalk LabsのCEOはダニエル・ドクトロフ氏が務める。彼は、Bloombergの元CEOで、それ以前はニューヨーク市長のマイケル・ブルーンバーグの下で副市長(deputy mayor)として、経済開発分野で活躍していた。

Sidewalk Labs, a Start-Up Created by Google, Has Bold Aims to Improve City Living
【New York Times: June 10, 2015】

Google’s Next Project: Fixing Congested Cities
【Wall Street Journal: June 101, 2015】

このSidewalk Labsの動きが興味深いのは、今後の大都市圏のあり方を考案し実行するチームとして、GoogleとBloombergがタッグを組むように思えるところだ。もちろん、会社の設立には直接マイケル・ブルーンバーグもBloombergも加わってはいない。しかし、ドクトロフの経歴を見れば明らかなように、ブルーンバーグとの関係は深い。

そもそもブルーンバーグ自身、ニューヨーク市長時代から、21世紀は「都市の世紀」ということで、市政府を中心に世界的な連携を図り、地球温暖化などの諸問題に対処しようとしてきた(詳しくは、最近上梓した『〈未来〉のつくり方』(講談社現代新書)を見て欲しい)。ブルーンバーグは、ニューヨーク市の統治・経営にも、ITを駆使することを試みていた。ドクトロフは、そのようなブルーンバーグの側近だったわけだ。

一方、Googleは、ペイジがCEOに就任して以来、サーチ広告の会社から、ハイテク全般に力を入れる方向へと経営方針を旋回させている(こちらも詳しくは『〈未来〉のつくり方』を見て欲しい)。その中には、都市システムと関わる事業開発も含まれている。たとえば、ブロードバンドサービスを、個別に市政府と協力して提供してきた。あるいは、自走自動車のように、本質的に都市の交通インフラ、というかシステムと関わる開発も進めている。

だが、ニューヨークのような大都市圏でIT/ハイテクを活用する事業会社への関与は、今回が初めてだ。Googleは、今後、ニューヨークという巨大都市を実験場にしながら、様々な「都市イノベーション」に関わることになる。また、都市の時代の到来を率先してきたブルーンバーグサイドからすれば、イノベーションを推進するための資産を豊富に擁するGoogleとのタッグによって、様々なアイデアを具体的な施策に落としこむことができる。なにより、それらを実際に試してみることができる。

もちろん、テストベッドとしてのニューヨークで首尾よく開発されたサービスが出てくれば、それは他のアメリカの大都市(ロサンゼルス、シカゴ、サンフランシスコ等)だけでなく、地球上に点在する「世界都市」候補の大都市圏(ロンドン、ベルリン等)でも展開される可能性がある。もちろん、各地における市当局との折衝は不可欠だろうが、単なる机上のプランではなく、実績のある都市イノベーションであれば、導入の検討もより速やかになされることだろう。

もう一歩下がって、このSidewalk Labsの動きを見てみれば、これを通じてGoogleは、場合によっては都市開発や都市計画の分野にまで乗り出すこともあるのだろう。つまり、従来であれば、建設会社や建築事務所が請け負ってきた領域にまで乗り出すための通行手形を得ることができるのかもしれない。コンピュータ分野におけるシステムやアーキテクチャの発想が、文字通り「アーキテクチャ=建築」の領域にまでスプロールする。ある意味で、Googleのオープンシステム思考が、都市を介してリアルな公共的課題(Public Affairs)にまで適用対象を拡げていくことになる。

もちろん、企業名にある通り、Sidewalk Labsはまだ「ラボ(研究所)」でしかない。しかし、焦点を「都市(シティ)」に絞ることで、その研究対象はより具体化されるはずだ。

先日、Wired.jpに寄稿したように、Appleが「健康」に焦点を当てながら社会・公共に対してコミットしていこうとするのに対して、Googleは、都市経営そのものに関与しようとする。ソーシャルが当たり前の時代になって以後の対処方法でも、それぞれの企業の特徴が現れているようで興味深い。

ともあれ、Sidewalk Labsの動きの背後には、人的ネットワークから見て、GoogleとBloombergのタッグが透けて見える。今後、具体的にどんな計画を公表してくるのか、楽しみにしたい。