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Twitterの創業者の一人であり、同時に、モバイル決済サービスのSquareの創業者CEOであるJack Dorseyが、アメリカのメディア・コングロマリットの一つであるDisneyのボードメンバーに加わることになった。
Tech Takeover: Jack Dorsey Joins Sheryl Sandberg On Disney Board
【Forbes: December 23, 2013】
Disneyはしばらく前からボードメンバーにウェブ/IT系企業の経営者を迎えている。フルCGアニメーション製作会社であるPixarをDisneyが取得した時には、Pixarの株主でありCEOであったSteve Jobsがボードメンバー入りした。2009年にはFacebookのCEOであるSheryl Sandbergもボードメンバー入りしている。
単純に考えて、ソーシャルネットワークの最大手であるFacebookからはSandbergが加わっているので、Dorseyへの期待は、TwitterとSquareを立て続けに起業したDorseyがもつ、コミュニケーションテクノロジーを社会に活用する「嗅覚」にあると考えてよいのだろう。
実際、Disneyは、ハリウッドのメディア・コングロマリットの中では、メディア・テクノロジーの変化に敏感な企業だ。というのも、他のハリウッドメジャーが映画やドラマという映像系コンテントの製作/配給(配信)に注力しており、そのため、もっぱらメディアテクノロジーの変化を配信技術の変化として捉えているのに対して、Disneyの場合は、ディズニーランドという世界に誇るテーマパーク事業へのメディアテクノロジーの応用を常に考えているためだ。よく知られるように、映画世界の疑似体験を促すために、バーチャル・リアリティ技術をいち早く取り入れてきた。メディア技術やコミュニケーション技術を、一種の「魔法」として扱い、テーマパークの魅力を増すために活用してきた。
実は、そのテーマパーク事業の中でモバイル決済を利用しようという計画もしばらく前からあった。
At Disney Parks, a Bracelet Meant to Build Loyalty (and Sales)
【New York Times: January 7, 2013】
パーク内の施設の利用にあたっての、いわゆる「パスポート」をデジタル的に、モバイル的に利用しようというものだ。施設内での決済をデジタル化/モバイル化することで、混雑の緩和だけでなく来場者の利用回数の増加(要するに売上増大)に利用できるのではないかと考えていた。
したがって、Dorseyの参加も、直接的にはSquareでの経験や知見を、パスポート事業に利用できるのではないか、という期待もあるのだろう。Starbucksのようなチェーン展開をする飲食事業や、小売事業において、支払い方法を変える手段としてSquareは活用され始めているからだ。単に支払い方法を変えるだけでなく、支払い場所を固定的な場所から開放することで、ゆくゆくは店舗設計のあり方、あるいは、巨大商業施設(いわゆるショッピングモール)における来場者の導線設計にも係るような変化だからだ。
そして、今書いたように、支払い方法というアプリケーションは、特定の施設によらない(それは、クレジットカードの利用を見れば明らか。カードリーダーが配備されれば、クレジットカードで決済可能だからだ)。したがって、仮にディズニーランドで導入された電子決済方法であっても、その利用方法をテーマパーク以外に拡張することも可能だ(当初TSUTAYAで導入されたTポイントがガソリンスタンドやコンビニなど提携企業の施設でも利用可能なことを思い出せばよい)。
このように、ウェブやスマートフォンなどのコミュニケーションテクノロジーは、ともすれば映像配信手段のバリエーションとして捉えられるメディアテクノロジーと異なり、応用範囲は広い。そのコミュニケーションテクノロジーを活用する嗅覚がDorseyに期待される。テクノロジーを活用してきたディズニーが、次にどんなマジックを生み出すのか。そのためにDorseyが何らかのきっかけを与えるのか。単なるボードメンバー入りという事実を越えて、これは面白そうな動きといえる。