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元Sun MicrosystemsのCEOで同社の創業者メンバーの一人でもあったScott McNealyがインタビューを受け、シリコンバレーはかつてあった活力を失っているとに答えている。
Former Sun CEO Worries About Region's Prospects
【Wall Street Journal: February 10, 2011】
製造もデザイン(この場合は設計だと思う)もcomputing(多分プログラムを実際に稼動させるサービス)もシリコンバレーでは行っておらず、海外に出てしまっている。こうした変化に、教育も規制も政策も全く追いつけていない、というのがMcNealyの主張。
加えて、企業のオプションを減らして活力を削ぐように、連邦政府も州政府もシリコンバレーに首を突っ込み、必要のないところまで規制を行う。企業年金も多すぎるし、組合化も過剰である、というのが、さらにシリコンバレーの勢いを減速させている、という見方のようだ。
要するに、McNealyの目からすれば、シリコンバレーはデトロイトのようになってしまったようだ。デトロイトは、アメリカの自動車産業の象徴としていわれる。自動車業界のBig 3のうちGMとChryslerは、リーマンショックの直後に連邦政府の救済措置を受け入れなければならないくらい硬直化した組織となっていたと言われている。
McNealyはSunの創業者であったことを踏まえれば、いささか企業経営者の視点から事態を見すぎてしまっているようにも思えるが、FacebookやTwitter、Zyngaのようなウェブ企業を除くと、シリコンバレーも経済情勢はあまりよくないというのが実情だ。
In Silicon Valley, Recovery Remains Limited
【Wall Street Journal: February 15, 2011】
McNealyも指摘しているように、Facebookのように現在注目を集めるウェブ企業の多くは、ソフトウェア開発が中心の労働集約的な企業が多いため、仮に成長しても、その経済波及効果は大きくない、ということだ。要するに、モノを作らなかいから、設備投資も大していらないため、知的能力の高い人達の中だけで利潤が回るに過ぎない、という見方だ。
この点は、McNealyが、ワークステーションやサーバーを製造し販売してきたSunのCEOであったことが効いてくる。
そして、だからこそ、例のSOTUでオバマ政権の政策として主張されたように、
● 未来の被雇用者予備軍の技能を、主にMath & Scienceの点から底上げする一方で、
● 大望のある優秀な留学生がアメリカ国内で起業することで就労機会を増やすようにするようビザのあり方をてこ入れする、
必要がでてくることになる。
その意味では、McNealyの受け答えは、大きな構図にも当てはまっていることになる。
記事を読む限り、McNealyはすっかり隠居を決め込んだ元経営者のようにも見える。その分、彼の発言は、過去のシリコンバレーを懐かしむトーンに包まれているような印象を持つ。
となると、大切なのは、彼とともに嘆息するのではなく、こうした状態を受けて何をするのか、ということにある。
ということで、IntelのOtelliniやGEのImmeltが、連邦政府入りしたところで何をするのか、気にかけたい。
彼らはともに、製造業の経営者だから。