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FCCの委員会でnet-neutrality ruleの導入が承認された。
FCC approves net-neutrality rules; criticism is immediate
【Washington Post: December 22, 2010】
Internet Gets New Rules of the Road
【Wall Street Journal: December 22, 2010】
F.C.C. Approves Net Rules and Braces for Fight
【New York Times: December 21, 2010】
neutralityが導入されるのは、有線のインターネット事業者で、アメリカの場合、AT&TやVerizonのような通信事業者やComcastのようなケーブル事業者がそれに当たる。一方、無線のインターネットについてはこのルールは適用されない方向だ。
そのため、このルールについては、従来のnet-neutralityの反対派のみならず推奨派までもが反対を表明しそうな勢いにある。要するに、ワイヤレスの世界だけ特例にしていいのか、ということだ。
無線のインターネットが今回放置されたのは、もっぱら技術的な問題といわれるが、実体としては、無線の分野がスマートフォンを含めて成長領域であり、回線を配備する事業者の投資意欲を削がない、というのが実質的な理由だろう。だから、行為的に解釈すれば、スマートフォンを含め、一定の普及を見た暁には、有線同様、net-neutralityが適用される、という気運が高まるのかもしれない。
もちろん、事業者側がいつまでも技術革新中なのだ、と言い続けることで、そうした事態を先延ばしさせることは十分可能だ。だとすれば、問題は成長のタイミングの判断ではないはずだ、というのが推奨派がこのルールに反論する一番の根拠だと思う。
今回のルールが難しいのは、とりあえず、今までFCCの管轄外であったインターネットをとにかく規制し、少なくとも有線の世界では従来は慣習としてなんとなくそちらが正しいと思われてきていた、インターネットのオープン性を確保することが最優先のところだ。しかし、ルールを明示した途端に、ルールの適用範囲を明確にしなければならず、結果的に、無線の世界は対象外だから、事業者の意志が優先されてもいい、という解釈を表立って主張することを可能にしてしまうところだ。
だからこそ、無線の世界でこのルールが適用される「例外事項」としてSkypeのようなIP電話が挙げられたことになる。あからさまに通常の無線電話の競合であるため、ルールの適用がなければ間違いく何らかの妨害措置を取るのではないかと思われたためだ。
とはいえ、現在の無線インターネットは実質的には、iPhoneのようなスマートフォンの事業者がアプリ選択に関わるため、net-neutrality ruleを厳格に適用しようと思えば、端末のレイヤーにまで入らないと有効性を持たない。逆に言うと、この端末のレイヤーの部分でルールの適用を考える、ということもありえるのかもしれない(とはいえ、その場合、管轄がFCCになるかどうかは微妙なところだが)。
たとえば、先日来、インターネットを騒がしているWikiLeaksのアプリが、iPhoneで取り下げられるということが起こっている。
WikiLeaks App Removed From App Store
【Huffington Post: December 21, 2010】
ちなみに、Android Phoneには残っている。つまり、この端末、というか、スマートフォンのシステムを牛耳ってるレベルでの検討も必要になる。
有り体にいえば、一歩ずつできるところからルールを作っていくしかない、ということになる。
とはいえ、FCCがルールを作ったからと言って、それが即正しく導入されるとは限らない。最初のワシントン・ポストの記事にあるとおり、さしあたっては訴訟を通じて差止められる可能性も高い。加えて、このルールの導入の承認自体、FCCの中でデモクラット系の委員しか賛意を示さなかったため、GOPの議員らから反論が企てられる可能性もある。
結局のところ、FCC委員長のGenachowskiは針の筵に座ってしまったことになる。
年が開けると、GOPが下院で多数派となった連邦議会が始まる。その議会からの揺り戻しも気になるところだ。