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Washington Postが政治関係のニュースだけを"Post Politics"という一つのカテゴリーとして一見すると独立したサイトに見えるような形でリニューアルしてきた。
今までは他のニュースカテゴリーと同じテンプレートで政治関係ニュースをサイトにアップしてきていたわけだが、それを変えてきた。試しにWashington Postの他のニュースサイトに行ってみれば、サイトの「見た目」の違いがわかる。
たとえば、TwitterアカウントもPost Politicsだけで独立したものになっている。
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単にサイトの顔つきを変えただけの、たわいのない動きとも取れるのだが、それでもこの変化はいろいろと徴候的だと思う。
思いつくままに列挙すると:
●サイトの顔つきを変えることで「視覚的」イメージによる認知の違いを強調する。情報の海に埋もれないようにする。
●新聞は一般紙という固定観念は、ウェブの上で通じない。ジャンル毎の専門サイト群がむしろ直接の競合になる。
●Washington Postの場合、アメリカの連邦政府のあるDCを情報源としてカバーしており、その情報にこそオリジナルの情報がある。その特性を前面に出すことで他紙との差別化、というか、「浮上化」を試みる。おそらくは、Politicoのようなサイトを意識していると思われる。
●Twitterのオリジナルアカウントの設置のように、コアカテゴリーに流入する「ユーザー」(あえて「読者」とはいわない)をしっかり捕まえることを第一にする。おそらくはサイトへの流入数を検討した上で、まず、Politicsにピンを立てることを選択したのだと思う。
●これからアメリカは11月の中間選挙に向けて選挙戦略や戦術に関する報道が増える。その多くは、時間の制約の中でのせめぎ合いの中で「消費」されるので、ニュースサイトの中で流入先を明確にする方が得策だと思われる。
とりあえず、こんなところか。
もう少し目線を上げて見れば、こうした動きをすることで長い目で見れば、
一般紙 = Σ 専門誌群 (Σは総和のこと)
という形にウェブ上の新聞の情報単位を一度分解する方向に向かうということ。
その上で、専門誌群の中からコアとなる情報クラスターを前面に出していく、と言うことになるのだと思う。
こうした分解というか細分化が実際に進むのはおそらくはTwitterによって断片化されたフロー情報の伝播速度が格段に増えたからだろう。だから、実際には、専門のTwitterアカウントを作るのなら、いっそのことサイトの顔つきも変えてみよう、ということだったのかもしれない。
実際、Twitter上でRTを繰り返されることでサイト側は何もしなくても潜在的なサイト訪問者の数を増やすことができるし、ユーザーの流入数が間歇的に増えるのは、情報の鮮度や内容、分析力、総合力、のような、個別記事のもつポテンシャルに大きく依存するからだ。もちろん、その情報が現在の社会的状況の中でどのように「縁取」られているのかにもよる。
もちろん、上でも指摘したように11月に中間選挙が行われるというスケジュールの影響もあるだろう。
ということで、今回のWashington Postの変化は、情報の密度や速度が格段に増した状況での「ジャーナリズムの流通方法」の更新、という点でなかなかに示唆に富む動きだと思っている。