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Microsoftが遅ればせながら陣容を整え直した上でSmartphone市場に参入する。
Microsoft Targets Phones
【Wall Street Journal: February 13, 2010】
Microsoft Starts Over in Phone Software
【New York Times: February 13, 2010】
Windows Phone 7(WP7)がそれ。従来のWindows MobileがPCのWindowsシリーズのUIを踏襲していたのに対して、WP7は設計思想をWindowシリーズから断絶しSmartphoneらしいものに変えてきた。
Hubと呼ばれる機能で、カテゴリー別にウェブ上の複数アプリで利用するデータと統合管理しようとするところは、ビジネス仕様を重視するMicrosoftらしい仕様。
既存のベンダーやキャリアを配慮した座組になっている。基本はソフトウェアベースで、WP7シリーズはベンダーが製造・販売する。ただし、HP、Dellなどのベンダーも独自にソフトウェアを開発し搭載する。
このあたりの、ソフトウェアとハードウェアの開発が綺麗に分断されなくなっている当たりが、SmartphoneがPCのカテゴリーキラーであると多くの企業が思っていることの現れといえる。
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ということで、アメリカの市場はSmartphoneをPCの次に来る商品として明確に位置づけたといってよい。
AppleとGoogleがそれぞれ企業文化(Elegance vs Algorithm)を反映したエッジのある商品・サービスを提供すれば、その背後をMicrosoftやNokiaがピッタリついてくるといったイメージ。
AppleやGooglegが既存のPC産業のしがらみに縛られなくていい分、好き勝手に新しいこと=新機軸を思い切って試みようとしているのに比べれば、今回のMicrosoftの動きは、当のPC産業のしがらみの中でどう新しい市場の立ち上がりにコミットしていくかという課題への対応の一つといえる。
WP7シリーズの販売は次のホリデーシーズンという。その間に適宜商品スペックのリリースはされるのだろうが、しかし、その間にもAppleやGoogleが販売実績を作りつつ市場イメージを形成していく。そこに後続のMicrosoftらがどう巻き返してくるのか。
既に重厚長大企業並みに官僚化されているとは伝えられるものの、Microsoftからも、たとえば、MS Photosynthのような情報工学の粋を集めたようなソフトウェアが突然リリースされたりする。だから、Microsoftに全くチャンスがないというわけではもちろんない。その意味では、HPもDellもIntelもそう。
むしろ、Microsoftの縛りが消えていく中で、アセンブラやチップメーカーと位置づけられた企業がどのように変容していくのか、経営学の観点からはとても興味深い事例になっていくと思う。市場環境の明らかな変化に対して、どこまで自分たちの既存の地位や市場を捨てて、自分たちの営業活動を再定義できるのか。注目に値する。
そして、もちろん、こうした後続大企業のプレッシャーがAppleとGoogleに更なる加速を強いることになる。
つまり、PC産業の変容(transform)という点で興味深いことが起きる。
これは、コンテントやサービスやあるいはそれらのエコシステムの構築、という点とは異なる文脈で面白い観察対象となる。
Microsoftの全力に是非とも期待したい。