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Smartphoneやe-bookが話題の中心になり、AppleやAmazon、Googleらの帰趨が取り沙汰されているときに、すっかり蚊帳の外に置かれてしまった感のあるMicrosoft。その影の薄さについて、元MicrosoftのエンジニアであったDick Brass氏が分析した寄稿。
Microsoft’s Creative Destruction
【New York Times: February 4, 2010】
よく読むと、OBの一人としてMicrosoftの行く末を案じているのだが、それが故に、かなり辛辣なMicrosoft批判になっている。
一言でいうと、帝国と呼ばれるMicrosoftは、創業期のラッキーに支えられただけの会社似すぎない、とのこと。創業期のラッキーというのは、WindowsとOfficeの成功。
それ以後のプロジェクトは何をしても、社内的には、WindowsチームとOfficeチームの影響で頓挫してしまう。典型的な大企業病。GMのようなものだというのだから事態は深刻だ。
公平のため記すと、BrassはTablet PCの開発担当者であったということ。そして、彼が去った後も続けられたTablet PCの開発部隊は、AppleがTablet型コンピュータをリリースしてくるのではないか予想されていたにもかかわらず、解散させられた。
昨日のZittrainの寄稿もそうだけど、iPadはPCというマシンに引導を渡す役目を担うだろういう認識は強い。Brassもそうで、それはよくも悪くもMicrosoftはソフトウェアに注力し、ハードウェアの部分で失敗してきたから、と。
ただ、新たなマシンの提案には、ハードウェアを含めたトータルのシステムを提案する必要があり、その点で、いまだにMacを作り続けてきたAppleとは、市場というか、世界の見え方が異なっていたのではないかと指摘している。
Microsoftが今後復活するのかどうかについてはopen question(何ともいえない)ということ。今までまともにinnovationを産み出す仕組みを社内に作ろうとしてこなかったのが新商品の開発で成功を逃してきたことの原因だというのだから、この点を改善しない限り、先行きは不透明なままだろう。
もっともAppleがマーケットリーダーにまで復調するとは、10年前はわからなかった。Microsoftに同様のことが起こらないとは言い切れない。さしあたっては、Bingを梃子にしてGoogleの対抗馬としての地位を築けるのかどうかが鍵なのだろう。
世界中でメディア・コンテント商品のディストリビューターになろうとするApple。シリコンバレーを中心と開発されるハイテクの商業化全般にコミットするGoogle。世界向けのECサイトへの脱皮しようとするAmazon。現在話題になっている企業には、わかりやすい成長の夢、シナリオがある。はたして、Microsoftは同種の、しかしMicrosoftにしか設定できない「夢」を提示することができるのだろうか。