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世界分業体制の中でのパテントの所在: アメリカ産業界の憂鬱

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December 18, 2009 20:15 jst
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アメリカでの特許取得件数で見ると、アメリカ人よりも外国人の方が取得件数が多くなった、という。

Innovation: Ben Franklin, Where Are You?
【BusinessWeek: December 17, 2009】

外国人(正確には外国居住者)の中でも、アメリカに留学した後帰国した中国人やインド人による特許取得数が増えているようだ。

911以後、アメリカのビザ取得基準が厳しくなり、留学後祖国に帰る学生は増えた。911以前は、アメリカで学んだ高学歴のものについては、アメリカで仕事を得て、労働ビザの取得を経て、Green Card(永住権)、しかる後、アメリカ人への帰化、という流れがあったという。

そのため、今回のような事態、つまり、アメリカにおける特許取得において外国人が優位になるという事態については、数年ぐらい前から予見されていた。今回、その予見が現実化したわけだ。

パテントは、期間限定だが独占的なライセンス力を付与する制度なので、アメリカで登録された特許件数でアメリカ人よりも外国人の方が多くなったということは、比喩的にいえば、いわば、アメリカの土地を外国人が買い占めていくようなもの。土地は経済活動の基盤の一つなので、それを外国人によって占められるということは、地代収入の多くが国外に送金されてしまうことを意味する。

だから、アメリカでも、パテントが外国人によって所有される傾向が強まることについては懸念があるようで、その対策としては、インド人や中国人などの学生や起業家がアメリカで会社を興し、できるだけパテントのライセンスから上がった収益がアメリカ国内に滞留する策を考えているようだ。たとえば、アメリカ国内で起業して雇用が発生した場合は、それだけでビザが取得できるような案が浮上している。

世界的な分業体制が進む中、その根幹となるパテントを誰が所有するか、あるいは、そこからあがる利益(一種の地代)が、そうした分業体制の中でどの国に多くとどまるのか。こうした観点から、企業の本社をどの国に置くか、というのも、多国籍企業では重要な経営戦略の一つになる。