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McGraw-Hillが売りに出していたBusinessWeek事業だが、Bloombergが買収することが決定した。
Bloomberg to Buy BusinessWeek After McGraw-Hill Tires of Losses
【Wall Street Journal: October 14, 2009】
Bloomberg Buys BusinessWeek From McGraw-Hill
【New York Times: October 14, 2009】
Bloomberg Wins Bidding For BusinessWeek
【BusinessWeek: October 13, 2009】
McGraw-Hillは80年に及ぶBusinessWeekのオーナーシップを放棄することになる。
ディールの詳細は無論公表されていないが、伝えるところによれば、買収にあたりBloombergが500万ドルを支払うとともに、BWが抱えている負債1000万ドルも引き受ける。
McGraw-Hill(やConde Nast)は、現在の雑誌事業の低迷は景気後退による一過性のものではなく、構造的な原因を孕んだものと捉えている。だから、景気が回復したとしても、以前の水準にもどることはないという判断で、長年にわたって出版してきて、ある意味、出版社の顔となっていた老舗雑誌から手を引く決断をしたわけだ。
記事にあるとおり、Bloombergは経済情報を中心に多くの取材記者を抱え、記事配信=通信社的事業(Wired Service)にも手を出している。単純な比較はできないものの、Bloombergは2200人の専属記者を抱え、それはAPの3000人と比べても遜色ない数にまで至っている。
もともと、ディーラーら証券市場の現場に市場の情報を与える端末を販売するところからスタート。その後業容を拡大、Reutersのように金融市場に影響を与える情報の速報を中心に、メディア事業に乗り出す。ケーブルで24時間の金融情報ニュースを提供したり、専門誌を発行している。
いうまでもなく、インターネットの時代には、専門端末による情報提供には限界があるため、Bloombergとしては広く金融情報サービスメディアとしての地位を築くことで業容の転換を図ろうとしてきたのだが、いかんせん、ReutersやAPに比べると、金融情報専門というイメージが強く、メディアとしてはリーチが今ひとつだった。
だから、今回のBW買収も、情報の「購入者」の裾野を、一般のビジネスマンや政府職員にまで広めたいというのが、一番の狙いのようだ。雑誌名にもBloombergを冠して、“Bloomberg BusinessWeek”とし、全面的にBusinessWeekブランドをBloombergの出版物やテレビなどで展開していくようだ。
一方、McGraw-HillはMcGraw-Hillで、広告依存型の雑誌事業から撤退し、より直接的に価値のある情報を販売する方向に舵を切る。専門書事業、特に大学などの高等教育機関用の教科書事業や、S&Pのような格付事業に集中する。
以上のBloombergやMcGraw-Hillの判断から推測するに、出版事業というのは、広告以外の随伴事業からの収益で補填を受けながら展開していく、というのがアメリカの関係者の間で徐々に共有されているイメージのように思える。
もちろん、Bloombergもこれで安泰というわけではなく、たとえば、次のように、買収自体を厳しく見る市場関係者もいる。
Why does Bloomberg want BusinessWeek?
【MarketWatch: October 14, 2009】
この先、Bloombergの業績が悪くなるようなことがあれば、改めてBusinessWeek部門が売却、という話も出てくるかもしれない。さながら、ベースボール球団のオーナーが代わっていくように、一定のブランド認知のある雑誌については、その雑誌部門がその時々に資金力のあるオーナーの手に渡って商品としては継続されていく。そんな事態が、この広告の構造的不況の中では、しばらくの間、続いていくのかもしれない。
さしあたって、Bloombergの買収作業は年内で完了する予定ということなので、年が明けたところで、BusinessWeekがどのように変わるのか、当然、ウェブサイトも変えてくるということも含めて、まずは期待しておきたいと思う。