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世界最大の(広告会社ではなく)マーケティング会社の一つとされるWPPが示した、世界の広告市場の見通し。景気後退の認識は抜けきらず、それゆえ、世界中で高額の広告キャンペーンにはまだお金が流れていくようには見えないという。
WPP Takes Wary Stance
【Wall Street Journal: August 27, 2009】
あわせて、仮に経済状況が好転したとしても、そのときには、以前の広告・マーケティング状況とは異なる事態が生じているだろうという見通しも示している。理由は、多くの企業が、デジタルメディアの(広告)マーケティングへの利用に関心を示していること、また、これはWPPの顧客が欧米の多国籍企業であることも影響していると思うが、今後の世界経済の牽引役は先進国からemerging markets諸国へ移るからだ、という。
WPPのトップであるMartin Sorrell氏が語るには、「今後は30秒のテレビCMではないし、新聞や雑誌でもない。地域としては、ロシア、インド、中国、ベトナム、であり、メディアはデジタルだ」ということだ。
また、経済状況についても、広告産業については回復を語るには時期尚早で、来年でも横ばいだろう、という見通しを語っている。
ただし、こうしたSorrell氏の見通しは、広告産業の回復を示唆しているPublicisやOmnicomのやや楽観的な発言とは異なっていると、上の記事は指摘している。
Sorrell氏は広告・マーケティング業界では有名な人物で、それは、彼がHarvardのMBAを取得していて、財務に詳しく、80年代から90年代にかけて欧米で起こった、Trans-Atlantic(大西洋の両岸:欧州と北米のこと)で起こった、欧米企業の相互参入活動の活発化に対応して、米英を中心に、広告・マーケティング業界のM&Aを進めた人物であるため。
たたき上げのアドマンが経営者まで務めることが多く、その意味では、他業界に比べておおらかでのんびりした雰囲気で経営されていた広告業界において、経営や財務のロジックを全面展開して乗り込み、業界の構造を変えるのに大きく貢献してしまった人物でもある。
そのため、Sorrell氏の広告・マーケティング業界に対する見通しは、アナリストやエコノミストを中心に尊重されて聞かれることが多く、業界見通しのstandard setterとなっている。
そのため、おそらくは、上の彼の見通しにかなりひきづられる形の見通しが、しばらくの間は、経済誌、ビジネス誌で記されることになると思う。