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イギリスで、包括的なデジタル政策、“Digital Britain”が公表された。ブロードバンドの配備目標やそのための財源確保方法(Broadband tax)に触れるほか、Digital Piracyについての基本的な考えも記されている。
次のWSJの記事は、このうち、Digital Piracy について重点的に報告している。
U.K. to Restrict Internet Access for Repeat Digital Pirates
【Wall Street Journal: June 17, 2009】
基本は警告をだして一年経っても改善が見られない場合は、Ofcom(イギリスの情報通信事業の監督当局)が違法行為者のインターネットアクセスに制限を加える権限を行使することができる、というもの。
先日、フランスではインターネットの利用制限まで行うのは違憲という判断がされていた(このエントリー)。イギリスなりの対応方法が上記のもの、ということになる。
Digital Britainが実際に実行されるには、イギリス議会での立法措置が必要で、いまのところは8月までに予定されている。もっとも、今、イギリスの政局は揺れているので、まだ二転三転という動きがあるのかもしれない。
(Digital Britainについては別エントリーでもう少し検討してみるつもりではある)。
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さて、イギリスが包括的な政策イメージを提出しているときにアメリカはどうなっているかというと、まだFCCの新委員長候補に対する上院でのヒアリングが行われている段階。
FCC Pick Backs Broadband Stimulus, Opposes Fairness Doctrine
【Wall Street Journal: June 17, 2009】
候補者のGenachowski氏の基本的な考えとしては:
●景気刺激策予算によるブロードバンド網の配備を推進することに肯定的。
●Fairness Doctrineの復活には否定的。 (Fairness Doctrineというのは、放送局が政治家に対する評価を行った場合、それに対する応答・反論機会をその放送局の中で行う機会を与えるもの。多チャンネル化時代を迎えて、その放送局でなくとも他の放送局、チャンネルで応答・反論機会を得られるという理由で、廃止された。)
●来年予定されている“Media Ownership Rules (メディア事業者所有規制)”の見直しについては、「メディア事業者の多様性の保持」を支持。
なお、上院からは、ブロードバンド推進策の実行に対してかなりのプレッシャーがかけられており、速やかにFCCが対処しない場合は、連邦議会側での立法措置に踏み切る可能性があることも示唆されている。
いずれにしても、Genachowski氏の指名が承認された暁には、アメリカもイギリス同様、ブロードバンドの配備に邁進することになるだろう。さらに、連邦議会を巻き込んでの新たなプラン作り=立法措置も行われる可能性がある。
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なお、来年2010年は、日本では、いわゆる「竹中懇」が残したプランによって、情報通信政策に関する見直しが行われる。その見直しの際、今までの日本の情報通信政策の検討方法に従えば、イギリスやアメリカの動きはベンチマークとして相応の影響を与えることになるだろう(特にBBCの存在から、放送事業を中心にイギリスの動きはかなり参考にされることが多い)。