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junichi ikeda

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Bi-partisanへの駆け引き

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February 01, 2009 21:20 jst
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junichi ikeda

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アメリカの主要紙で、Bill Richardsonが辞退したSecretary of Commerce(商務省長官)に、GOPで、ニューハンプシャー選出のJudd Gregg上院議員が有力視されている、という報道がされている。(たとえばここ

この動きが注目を集めるのは、

● Cabinet(大統領府閣僚)で三人目のGOPメンバーとなり、Bi-partisan(超党派)色が強まる。

● Gregg議員は、GOPの中では、Fiscal Conservative(財政保守:財政均衡をよしとする)であり、その考えに則って、Senate Budget Committeeのchairmanを務めたこともある。

● Gregg議員の選出地であるニューハンプシャーの州知事(ガバナー)は現在デモクラットのJohn Lynch氏であり、彼が任期二年を残したGregg議員の後任を、デモクラットから選出すれば、デモクラットは上院で議事妨害を免れる(filibuster-proof)安定多数である60議席を確保することができる。

アメリカの政策過程への影響という点では、三点目が一番大きい。政策実施のための、スピード感のある法律の制定、という点で、上院で安定多数を押さえられるかどうかは大きいからだ。

(補足すると、アメリカの場合、日本のように議員がそのまま入閣する議院内閣制ではない。三権分立に則り、Cabinetメンバーになる場合は、議員を辞職しなければならない。Cabinetは大統領府=Executive branch(執行府、行政府)に属し、Senate(上院)は立法府=Legislative branchに属するため)

上記の報道によると、アメリカ時間の月曜には発表される見通しのようだ。もちろん、覆される可能性も残っているし、仮にGregg議員が指名されたとしても、ニューハンプシャーのLynch知事が後任をGOPから選出する可能性すら残っている。

ただ、今回のような動きは、議院内閣制で、かつ、国会議員の党議拘束が強い日本からすると、想像しにくい「政治的駆け引き」のように思えるので、記録として記しておくことにした。

上院議員の選出に関する権限は州が握っているという点や、連邦議会、特に上院においては、議員の党派制といっても一枚岩ではない点などのあたりが興味深いと思う。

*

たまたま同じタイミングで、ブルーンバーグが伝えていてダボス会議のビデオの中で、マイケル・ポーターのインタビューがあって見ていたら、彼はDCの議員は(州や支援団体への)利益誘導型の政治しかできず脳死状態にあると酷評し、政策の有効性や一貫性を俯瞰してみられるのはむしろ州知事たちだ、ともいっていた。その点ではGregg議員はニューハンプシャー知事の経験もあるので、ポーターのお眼鏡にもかなう人物だろう。というのも、Secretary of Commerceは、州間取引の調整も行うので、ポーターが提唱する州に閉じ込められた産業構造を抜本的に見直すことでアメリカの産業構造そのものをリストラすべきだ、という考えの実行部隊がDepartment of Commerceの役割になるからだ。