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October 31, 2008
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Obama's 30-minute Infomercial

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アメリカ時間での10月29日水曜日の午後8時に、オバマ陣営は、30分のインフォマーシャルを放映した。

報道記事としては以下を参考に。

Over 33 Million Watched Obama's Half-Hour Ad (WSJ)

Infomercial for Obama Is Big Success in Ratings (NYT)

概要をいくつか記すとして、まず、放送の実態。

四大ネットワークのうちABCを除く三つのネットワーク、CBS、NBC、Fox、と、ケーブルネットワークとして、BET、UniVision、MSNBC、TVOne、で、プライムタイムである午後8時に30分番組として放映された。(なお、ケーブルネットワークのうち、BETは黒人向けチャンネル、UniVisionはヒスパニック向けチャンネル)。

視聴率としては申し分ない結果が得られていて、CBS、NBC、については、現在のレギュラー番組よりも高いレイトを示した。7チャンネルの合計視聴者数は3355万人。7チャンネル合計の数字だから単純比較はあまり意味がないと思われるが、参考数字としては、先日Foxで放送されたワールドシリーズ(ベースボール)の平均視聴者数が1980万人だという。

次に、インフォマーシャルの出来だが、ウエルダンの気持ちのいい映像ができあがっている。(たとえば、ここで見られる)。

基本は、フラッシュバック多用の、回顧調。
あたかも、既にオバマが大統領になった近未来から回顧したようなつくり。
想像の世界では、もう彼は大統領だ、というフレームになっている。

オバマが最後まで苦戦(といっても随分善戦しているが)している、中西部から南部の、白人、ミドルクラス、が視聴ターゲットの一つのため、全体的にカントリー調のドキュメンタリー形式。

伝達内容としては、
オバマについて (生い立ち、政策)
有権者について (四つの家族を例として紹介)
有力支持者のメッセージ (バイデンら。グーグル社長のシュミットも登場)

これらを、キャンペーン中の実際の映像をコラージュしながら仕上げている。

といっても、内容よりもイメージが大事な作りであることは間違いない。

とても、ロードムービー的で、
バンで学校の送り迎えにいく母を、
助手席から撮る、
車のウインドウの向こうは、
中西部的なだだっぴろい風景がひろがっていて、
しかも、夕陽(朝陽?)が差し込む感じで、
映像的には情感溢れるセピア調ともいえる。

このインフォマーシャルに関する記事をいくつか渉猟していたら、バックに流れている音楽には、NBCで流れていたドラマ「West Wing」のものも使われていたらしい。どうりでどこかで見た感じのする映像だと思ったはずだ。

ロードムービーは、アメリカ人、特にデモクラット支持者が好む映像で、

車にのって何処かに移動する様が、
なにかをする、という動き、
何処かに向かう、という動き、

つまり、「いま・ここ」の状況に飽き足らない自分が、何とかもがきながら次のステップに向かおう、自分のゴールを探そう、とするような感じに見えて、要するに、成長の可能性を含意している。

*

オバマのキャンペーンは、要所要所で、ドラマティックな作り、がなされてきたが、このインフォマーシャルは、その集大成といえるだろう。オバマが首尾よく、大統領になった暁には、アメリカ人の歴史の一つとしてきちんと残ることだろう。ちょうど、ケネディとニクソンのテレビ討論が、メディア政治の歴史の中で常に参照されるように。