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現在、北京五輪のまっただ中だが、BusinessWeekでちょっと無粋だが、企業と五輪の関係をうまくスケッチした記事があった。
リードに
From GE to Nestlé to watchmaker Omega, companies use the Games to test-drive new ideas—and strut their stuff
とあるように、五輪を広義のイノベーションのお披露目の場に使っていこう、というもの。広義というのは、ガチガチの研究開発の結果としてのイノベーションから、もっとアイデアレベルのものまで含むため。
ある意味、自動車業界にとってのF1みたいなもの。ただ、五輪の場合は、チューンする相手が主に選手になるため、記録や成績の向上すべく、外面的に支援してくれるスポーツ器具から、身体調整の点で支援してくれるスポーツ栄養剤あたりが、中心ではあるため。開発のフロントラインを記録更新という行為とリンクづけることで、イノベーションの意義付けを行うと同時に、その結果生まれた記録によって、それらハイチューンに使われた技術やノウハウが民生品になったときにも受け入れられる素地を作っていく、ということになる。
だから、これは、単なる「スポンサーシップ」から一歩も二歩も踏み込んだものになる。鉄と電力が中心の重厚長大産業が伸長中の19世紀末に万国博覧会が担った役割を、今日の五輪が担っているともいえる。つまり、より人間に密着した技術や商品開発が重要になった21世紀初頭では、チューンした人間として技術や商品をデモンストレートすることが五輪への企業の参加の大きな動機付けの一つとなっているということ。
BusinessWeekが紹介しているから仕方ないのかもしれないが、こうした意図をもった企業として紹介されるのがほとんど、欧米系の多国籍企業(multi-nationals)であるのが気になるところ。日本企業も単なるイメージ向上ではない、具体的なベネフィットを織り込んだスポンサーシップが必要になるタイミングかもしれない。