American Prism XYZ

FERMAT

251

latest update
July 16, 2008
13:58 jst
author
junichi ikeda

print

contact

251

《地球化》を実感する

latest update
July 16, 2008 13:58 jst
author
junichi ikeda

print

contact

今週に入り、アメリカの景気後退がいよいよ現実のものとなり、為替相場を中心に、大きな問題になっている。

昨年8月のサブプライム危機は、主に欧州の金融機関を中心にした国際金融システムのシステミック・リスクに関わるもので、その最悪の事態は避けられたものの、実体経済への余波は今年に入ってじわじわと浸透していった。

主な余波としては:

過剰流動性の引受先がコモディティに向かうことで、原油や食料市場の高騰化(一部投機化)を招いた。

特に原油高騰は、各国でインフレ懸念を高めた。(この数日、アメリカの他に、イギリスでもインフレ懸念が再燃)。

(通常、インフレは、原油や食料の価格の寄与を控除した、コアCPIで考えるものの、人々の間でインフレ懸念が広まることにより、近い将来のインフレの到来を見込んだ経済活動が実体化しつつある。)

サブプライム問題そのものは、公共政策としての「家屋供給」を破綻させ、アメリカにおいては、低所得者層を中心とした生活保護のような社会問題として浮上してきた。

短期的な原油高騰により、中東産油国を中心にマネーが集約し、それらの奪い合いが、先進国を中心に展開されており、先進国、開発国、といった関係も再定義が必要になる。国際的な政治の「力場」を変えるような事態も生じている。

(洞爺湖サミットでも見られたように、G7ないしG8が世界の舵取りをなしえた時代は終わったのではないか、という懸念。中国、インド、など、経済成長が著しくそれゆえ炭素排出でも大きな影響力を持つ国を含めないでは、G7で話し合ったところで、実効性に欠ける、ということ)。

・・・などなど。

こうした中、日本経済は、景気見通しを減速の方へ修正する一方、局所的には、ドルをはじめとする主要通貨の全面安によって、局所的に円高方向に振れる、といった状況にある。

こうした状況は、世界が一体化した、という点で《地球化》が現実化している、といってもいいのだと思う。

逆に言うと、日本のことを日本だけで解決しようとしてもできることとできないことが出てくる、ということ。「失われた十年」といって、一般的には、日本という島国に経済的にも社会的にも内閉したのが過去10年ということだが、当たり前のことながら、経済活動はその間も《地球化》が進んでいた。原油高騰で、突然、食糧自給の問題が浮上する、というのが、そうした事態をよく表している。

《地球化》概念が大事なことは、比喩的にいうと、投げたボールが地球を一周して自分に返ってくる、ということ。「国際化」は、交流を増やす、という局所概念だし、「世界化」は広大な領域に自分たちが接続された、という感覚で、ただ、いずれも、そうした行為がまわりまわって自分たちに返ってくる、という感覚は薄い。

せっかく景気がよくなった、といっても、日本の外で、景気後退が起こると、それが即自分たちの生活に関わってくる、という意味では、日本は既に、経済位相のレベルでは、全く島国ではない、ということになる。

こうした《地球化》の諸相を顕わにする過程として、今回の、地球規模でのリセッションを、捉えてみたいと思う。