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アル・ゴアが、化石燃料の代替エネルギーの開発に焦点を当てるVCをスタートする。
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パートナーは、クライナー・パーキンス。ネットスケープやグーグルの創業時に資本注入した、サンフランシスコの老舗VC。彼らからしても、ITの投資が成熟し、バイオへの投資も落ち着きつつあるところで、投資対象としてもちょうどいいタイミングのようだ。
シュワルツネッガーがガバナー(知事)を務めるカリフォルニアで、環境保全に向けた法案を通すことに尽力することで、開発中の資金だけでなく、開発後の資金の目処もたてるべく活動している。
これだけ見ると、マイケル・クライトンのノベルを地でいくような世界。つまり、資金調達から法案整備まで全て行う。しかし、それが「政府ではなく市場を中心に変革を進める」ことの具体的な一面なのだろう。だってそうだろう、これは相当な力業だから。政府の外で将来の青図を環境問題やエネルギー問題の専門家とともに具体的に描き(記事中ではそうしたカンファレンスをたとえば、サンフランシスコのフォーシーズンで行っているという説明もある)、資金を大学のEndowment(基金)や大手のファンドから調達し、その資金を今度は青図を実現しそうな技術者と起業家に配分する一方で、その事業が市場から収益を上げられるよう必要な法律をも変えていく、それも全米ではなくまずカリフォルニアから、というのだから。加えて、ゴア自身がadvocateとして例えばEU各国政府の首脳にまでその必要性を説いてまわるのだから。これを力業と呼ばずして何とよぼう。こうやって世界を力業で変えていこうとするのは、ある意味《資本制》を徹底的に飼い慣らそうとする所作でもあると思うので、リーズナブルだし、現実的だ。
しかし、ゴア。これで、すっかり、記憶に残る人物になったな、と思う。
大統領職の経験はまだないので、いまだに、大統領候補の一人には常に名前が挙がる存在。2000年の大統領選は、Gore v. Bushという最高裁の判決で決まるという、ある意味悲劇性を伴う負け方をしたのだが、その後、活動家として、マスメディアは商業化しすぎていて民主制に何も寄与しないと主張すればCurrentを立ち上げるし、環境保全が必要だと思えば、ドキュメンタリー映画を作りオスカーを獲得、それらの総決算としてノーベル平和賞は受賞すると言った具合で、なにやら「負けて勝つ」を体現している。もはや政治家というよりも活動家がふさわしい。
ゴアの主張は、最近出された“The ASSAULT ON REASON”を見ればわかるので、関心のある人はどうぞ。しかし、このタイトルだって、あえて扇情的に訳せば『(人間的)理性に対する陵辱』といったものだから、もはや政治家の扱うレベルを越えている。(同じタイミングでクリントンが出した“GIVING”が思いっきりかわいく見えてしまう)。
記憶に残るゴアがこれから何をするのか、ますます目が離せなくなってきた。