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NYT、傘下の放送局売却へ

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New York Times to Sell 9 Local TV Stations

【January 4, 2007: New York Times】

New York Times Sells TV Stations for $575 Million

【January 5, 2007: Wall Street Journal】

NYTが傘下のローカル局9局をOak Hill Capital Partnersに売却することを発表。

*****

随分前からNYTは新聞業に集中すると表明していて、ローカル局の売却もほのめかしていたので、ニュース自体は、あ、そうか、という程度のものだが、示唆するものは多い。

ざっと挙げても、

●ネットの勢いを受けて、新聞事業のビジネスモデル自体の転換が(株主を中心に)求められていること。
●売却先が同業他社ではなく、PEファンドであることの含意。
●いわゆる「メディア環境の変化」の中で、ローカル局の再編が必至なこと。
●マスメディアの事業構造の変化の一端、徴候。

アメリカでは、もはや、大手新聞社であれば、ネットと本紙、オンラインとオフラインの区別はなく、ニュースの製造・配信会社としてどうやって経済的成長と社会的使命を全うするかに邁進している。この点は、新聞社が未上場企業の日本とは大きな違い。大なり小なり、外部株主からの圧力がある中、ファイナンシャルな視点とオペレーショナルな視点のバランスを考えないと責任が問われるアメリカと、何ら外部からのアラームが鳴り得ない仕組みの日本との違いともいえるが。

ローカル局が、他のメディア企業ではなく、フィナンシャルバイヤーであるファンドに買われた、ということの示唆は大きい。ファンドである以上、いずれかのタイミングで転売が必要になるが、その転売までの2-3年の間にどう動くか。

現在、FCCで改めてメディアオーナーシップルール(日本のマスメディア集中排除原則と思えばよい)の緩和策が再度検討されるようになっているが、その動きに呼応したものかもしれない。一般産業であれば、独禁法的による審査を除けば、通常、バイアウトファンドは、ロールアップという形で、同業者を買い集めてバックヤードのオペレーションを統合することでスケールメリットを図る方向に動くわけだが、メディア企業の場合は、所有形態に様々な制約がつくので、単純にロールアップというわけにはいかない。その一方で、細かいルールの下で売り買いせざるを得ないので、その分仲介料をかすめることもできるし、仮にオーナーシップルールが緩和されれば、大手メディア企業に売却、という手もある。

だから、2009年のデジタル放送への移行を踏まえたローカル局の再編、という事態が、建前上は市場原理によって先導されることになる。この点は、日本の状況、放送持株会社導入による政策的救済?のような動きとは随分と異なる。

テレビに限らず、アメリカの場合、ここのところ、ファンドのメディア企業買収が目立っているが、これは、逆から見ると、ファンドの投資対象としてメディア産業が視野に入れられていることを意味する。従って、より経済合理的な解がメディア企業の再編の際には優先されるように思う。

いずれにしても、NYTのローカル局買収が示唆することは想像以上に大きいと思った方がよい。