American Prism XYZ

FERMAT

906

latest update
September 23, 2026
14:56 jst
author
junichi ikeda

print

contact

906

パラマウントとワーナーの合併で、CNNはどうなるのか?

latest update
September 23, 2026 14:56 jst
author
junichi ikeda

print

contact

2026年9月22日は、ハリウッドがシリコンバレーの手に落ちた日となった。

パラマウントとワーナーの合併に対して、カリフォルニア州司法長官のロブ・ボンタが他の11州の司法長官とともに反トラスト法違反で、買収元のパラマウント・スカイダンスに対して訴訟を起こしていたのだが、来春に予定されていた訴訟を前に、9月22日、示談が成立した。

しかもこの示談は、事実上、買収の条件をそのまま認めるものだった。これで、パラマウント・ワーナーという巨大スタジオが誕生し、ハリウッドメジャーは、ディズニー、ユニバーサル、ソニー、それにパラマウント・ワーナーの4社にまで絞られた。

最終的にこの示談に至った理由は、パラマウント・スカイダンスのCEOであるデイヴィッド・エリソンが、示談に至れないようなら、パラマウントを(そして合併後のワーナーも)カリフォルニアの外に移転させると脅したからだった。

もちろん、その発言があった直後には、ボンタ州司法長官も「脅迫だ!」と息巻いていたのだけれど、今回、あっさり示談に至ったことを見ると、その脅迫は本当に効いたようだ。

ともあれ、これで、デイヴィッド・エリソンのスカイダンスによるパラマント、そしてワーナーの買収が完成する。オラクルのCEOのラリー・エリソンの富と信用に基づき、息子のデイヴィッドがハリウッドを征した。シリコンバレーのマネーがハリウッドの支配権を手に入れた。

訴訟の真の焦点といわれていた、ワーナー傘下のCNNについては、売却の約束はなく、ただCBSも含め、テレビ報道部門については独立したボードが監督することが条件となった。

手放しで合併が許されたわけではないが、しかし、この独立ボードについては、遠からず骨抜きにされ形だけの存在になるのでは?という悲観的な見方がすでに現れている。父のラリーが長年政治的には保守であり、AI投資などでトランプ大統領と懇意であることから、息子のデイヴィッドがトランプ寄りの報道姿勢をCNNにも強いるのではないかという不安だ。

トークFMから始まり、ポッドキャストやYouTubeで当たり前になった文化戦争を反映した報道(?)メディア合戦がとうとう一番巨大なテレビニュースにまで及んできた感じだ。

ちょうど同じタイミングでトランプ大統領が、ホワイトハウスの報道通行許可証を、CNN、Politico、MS NOWの3社から取り上げたときでもあり、CNNの社員に対しては、トランプに逆らうとそもそも報道の機会を失うぞ!というメッセージにもなったことだろう。

もちろん、ホワイトハウスへの取材を拒否されたCNNを始めとする3社は、明確に憲法修正第1条(表現の自由、言論の自由、報道の自由、など)に反する決定だという理由で、裁判所に差止め請求の訴訟を起こしている。

3社以外の報道機関も、今回ばかりは足並みを揃えて、この決定に対して反論し批判を試みている。

このような状況下で、CNNはエリソン家の手に落ちた。はたしてボードで約束された「独立性」は維持されるのか?


これは直接、この合併や訴訟、示談とは関係ないのだけれど、トランプ2.0になってからの「ユニタリー・エグゼクティブ・セオリー」に基づく「強い大統領」の登場によってもたらされた各種機関の混乱によって、アメリカの公的機関――必ずしも政府機関に限らず、大学や非営利組織も含む――の多くが、州の垣根を超えて広がったギルド的存在から発展したものだったのではないかと感じることが増えている。

報道機関の独立性というのも、実はそうした「報道ギルド」が連邦政府に対して要求して確立されたものではないか、と。

たとえばFRBは、20世紀に入ってすぐ起こった金融危機への対応に迫られた複数の銀行が、いつまでもモルガン商会に頼り続けることはできないと感じて、「最後の貸し手」として中央銀行的なものを作ろうとしたことで初めて安定的な中央銀行的な機関が生まれた(FRBはあくまでも「ボード」であって中央銀行そのものではないことに気をつけよう)。

報道の独立性もそうした「心の構え」から生まれたのではないかと感じている。つまり、アメリカ社会の場合、20世紀になってからの「大衆社会化」は「全米社会化」と同時並行で進められた、ということで。

とまれ、この独立性や自発的機関の成立については別途考えてみることにしたいが、そのような「創発的な公的機関の生成」メカニズムをもつ(と思われる)アメリカなのだから、そろそろソーシャルメディア化の現実を踏まえて異なる組織が自発的に生まれるのかもしれない。

そうした可能性も視野に入れつつ、しかし、当面は組織的に厳しい局面に立たされるであろうCNNの動向に注目していきたい。