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2012年の大統領選の結果を見事に予測してみせ、選挙の後は、データ解析選挙の時代を象徴する人物としてメディアで大いに取り上げられたNate Silverが、New York Timesとの契約を更新せず、ESPN/ABCと新たに契約することになった。
Nate Silver of FiveThirtyEight Blog Is to Join ESPN Staff
【New York Times: July 19, 2013】
件の大統領選の見通しを伝えた、SilverのブログサイトであるFiveThirtyEight Blogは、そのままESPN/ABCへ移転することになる。
ちなみに、スポーツ中継専門(ケーブル)チャンネルであるESPNにしても、ABCにしても、Disney傘下のテレビサービスだ。
NYTとの契約満了を前にして、Silverに対しては、ESPN/ABCに限らず、報道各社が契約相手として乗り出していたという。その中からESPN/ABCがSilverの獲得に成功したわけだ。
FiveThirtyEight BlogのESPN/ABCでの稼動にはしばらく時間がかかるようだが、大きな選挙は来年の中間選挙まではないため、しばらくの間は、選挙分析というよりも、データ解析手法を使った社会事象へのコメントが中心になるのだろう。もちろん、スポーツ選手の行動や、プロスポーツのリーグ覇者の予想などを、データ解析を元にして提供していくことになるのだろう。実際、Silverの著書である"The Signal and the Noise"では、それこそ映画『マネーボール』よろしく、ベースボールについてもデータ解析による分析が記されている。
大統領選などの大きな選挙がある時は、そこに焦点を当てる。逆に選挙の合間の「(選挙の)閑散期」については、データ解析の手法を他の分野に適用する。
もちろん、対象ごとに微修正は必要だろうが、データ解析の手法そのものは対象によって大きく変動するものでもない。裏返すと、プロスポーツリーグ等の社会事象の解析を通じて開発された手法や得られた知見が、次の大統領選の際にも適用されることになる。
そういう意味で、データ解析による分析は、人びとの間でも常識になり、普遍的で一般的なものになっていくのだろう。そうして、データ分析が当たり前になった状態で、次の2016年の大統領選を迎えることになるのだろう。
こう見てくると、この先、データ解析のもたらす効果についてもいろいろと社会的影響という側面からコメントが繰り広げられることになるのかもしれない。プロスポーツも選挙も、あるいはビジネス活動も、全て同様の視点で似たようなアルゴリズムが適用されることによる副次効果は、社会的な可能性を広げることになるのか、それとも狭めることになるのか。具体的な動きやその影響の是非についても、徐々に社会的議論の遡上に上がってくるように思われる。少なくとも、政府を始めとした社会的機構の全自動化を必ずしも好まないアメリカにおいては、データ解析結果の予測についても議論されていくことだろう。そうすることで、データ解析に対する社会的リテラシーも具体化され、広まっていくように思われる。