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デジタル対応で成功するFinancial Times

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デジタル化への対応を進めることで業績を伸ばしているメディアもある。Financial Timesもその一つだという。

Financial Times Digs Gold Out of Data
【New York Times: March 6, 2011】

ニューススタンドの購買者にとって、惹句はスタンドからのぞくヘッドラインぐらいしかなく、購買後もどういう読み方をしているかわからない。それが、オンラインではわかる、という至極当然な説明がFTの担当者からされているのにはさすがに苦笑せざるを得ないが、それでも、その読者データの利用で、様々なことができてきた、という。

FTはWSJ同様、オンラインでも契約しないと大して記事は読めない。だから、基本的には、契約ユーザーの志向がデータマイニングでわかる、それが紙面構成に役立つし、広告主への説明にも活用される。

そのようなかいもあって、FTの売上に占めるデジタル販売の割合は、去年の19%から24%に上がっているという。

(売上総額が示されていないので、可能性としてはもちろん、デジタルが伸びただけでなく、紙版の売上が下がり、相対的にデジタルの比重が高まったということも考えられる。その場合でも、デジタルの重要度が上がっていることには変わりはない)。

また、デジタルでの契約者は、現在20万7000人で、これは昨年から50%の増。これに法人での利用契約が1000件という。売上では30%増ということ。

世界からアクセスできる英語メディアで契約者数が20万というのを多いと見るか、少ないと見るかは、結局のところ、その企業のコスト構造に依るが、このFTの場合は、やはり契約者数が伸びているというのはポイントだろう。

イギリスにおけるFTのライバルはNews Corp.であり、そのNews Corp.は今やWSJのオーナーであり、先日、iPadでしか見られないnewspaperをだしたばかりだ。この、英米、というか、英語圏をまたにかけた市場の争奪も、FTがデジタルに向かう、企業戦略レベルでの動機付けになっている。

FTはGoogle One Passの採用も考えているという。アメリカでは、新聞業界が中心になって、Googleへのカウンターとなるようなシステムを構築しようとしているが、どうも、イギリス勢については、そのような事を考えるよりも、より早期にグローバルリーチを確保するほうが得策と考えているようだ。

ちなみに、私はFTもEconomistも契約しているが、例えば、EconomistをiPhone
のアプリで見るのは率直にいって便利だ。むしろ、このような契約による売上を重視する媒体では、用途や場面に応じて端末が複数登場していくほうが、その利便性は増え、契約の促進になっていくように思える。

それにしても、このFTの現状を伝えているのがNYTというのも興味深い。NYT自体はどのような方向を目指すのか。そのための、敵情視察のための取材の副産物としての記事と見るのは、少しばかり意地悪に過ぎるだろうか。