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2010年のFacebookの広告売上は18億6000ドルで、アメリカのオンライン広告市場の5%程度である、という速報。
Facebook’s Ad Revenue Hit $1.86B for 2010
【Mashable: January 18, 2011】
Facebook Estimated To Collect Almost 5 Percent Of U.S. Online Ad Revenue
【TechCrunch: January 18, 2011】
オンライン広告市場の5%というと大したことがないようにみえるが、Facebookの広告は基本的にはディスプレイ型の広告で、その中でのシェアとなると概ね四分の一、つまり、25%程度を占めるとのこと。
裏返すと、どれだけ検索型広告の市場がオンラインにおいては大きいのか、ということでもある。
それにしても、ディスプレイについては25%程度。これは、注目していい特徴だろう。
Mashableの記事であるように、Facebook Creditsはクレジットの売上の33%がFacebookに入る計算。
ということは、Facebookの中では、広告とコマースの両方で収益機会がある。
しかも、ディスプレイ広告の方は、まだ改善の余地があるという。
こういうところが、未上場企業であるにも関わらず、先日のゴールドマン・サックスの出資ではないが、Facebookの株に投資家が関心を寄せる理由の一つだろう。
もともとは、既にある社会的な交流関係の支援というのがソーシャル・ネットワークのサービスだったわけだが、そこに集まったユーザーたちの嗜好を炙り出すことで、少しずつ、商品購入のクラスターも浮き彫りにしながら、商品の相互推奨のようなコミュニケーションのストリームもつくりだしていく。そうすることで、重層的な社交=ソーシャル・ネットワークをFacebook上につくりだしていく。
こう書くとファンタジックなものに聞こえるだろうが、随分前からrelationship marketingと言っていたものの実践方法の一つだ。そして、その商品購入の動機付けの部分を補強するのが、cause marketingとかadvocacy marketingといわれるようなもので、ある商品を特定の社会的文脈に置くことで、その商品の象徴的価値を操作していく。こうしたことを行う場としてFacebookはポテンシャルを持つ、ということだ。
企業と消費者の関係性、というのは、言うは安く行うは難しというのが実態だった。それは、告知の部分のマスメディアと関係性をハンドルする部分のメディア(イベントや販促会など)が現実問題としては連動しにくかったからだ。しかし、Facebookのようなウェブ上のプラットフォームと呼ばれるものは、マスメディアと違って、徹底して黒子に徹するため、従来的な意味での商業主義とは異なる消費主義ともいうべき関係性を築くことが、原理的にはより可能になる。
大事なところは、「原理的に」の部分で、それは見た目は、消費者と企業がFacebook上ではダイレクトにコミュニケーションをしているように見えるからだ。マスメディア的介在性を意識させないといってもいい。少なくとも、しばらくの間は、このポテンシャルの部分でFacebookの成長性には期待が寄せられることになるのだと思う。
cause marketingにしてもadvocacy marketingにしても、ある人生的な価値や社会的な価値のために、Aという商品よりもBという商品を買おう、という要素が付いて回る。つまり、価格とは異なる購入動機がそこでは生まれる。それはしばしば「価値」と呼ばれる。つまり、Facebookのようなプラットフォームの上では、ひとつの商品やサービスは、複数の価値で測られる可能性を持つわけだ。
好意的に解釈すれば、こうした「価値」の部分の操作性があるからこそ、ディスプレイ型広告の部分では成長の余地がある。そして、これらの実施においては、Googleのような表面的なユーザーの入力結果に対するリスティングでは対応できないことになるだろう。おそらくは、商品ごとの具体的なコンテキストの把握と操作が必要になるからだ。
いずれも、現段階では多くはポテンシャルに過ぎず、それゆえ期待値でしかない。とはいえ、Facebookの上での「広告」は、多分、広告というのが憚られるような形態になっていくのではないか。これこそが、マーケティング研究者の長年の夢ではあるのだが、どうもそのような可能性を秘めているように思える。
その意味で、Facebookの複合的な「広告×マーケティング×コマース」に繋がるアプリケーションやイニシアティブの提案には注目していきたい。