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Webを活用した“Underdog Strategy”で上院選挙に逆転勝利したScott Brown

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先ほど伝えたように、デモクラットの牙城であるマサチューセッツ州の上院議員特別選挙で勝利を収めたScott Brown氏だが、随所でウェブを使いこなしたことが勝利の方程式の一つだったようだ。

Atwitter in Mass.: Brown’s Social Media Strategy Tops Coakley’s
【Wall Street Journal: January 19, 2009】

短期間で認知を高めるために、FacebookやTwitterを活用、また、YouTubeのビデオも利用した。正確に言うと、対抗候補であったCoakley氏もそれぞれの利用を心がけたのだが、上の記事が伝えるとおり、いずれもそのフォローのされ方が段違いにBrown氏の方が多い。

したがって、動員をかけるところで、よりウェブの活用を心がけたという。そのあたりについて記しているのが次の記事。

How Scott Brown Used Google to Get Results in Mass. Election
【Wall Street Journal: January 19, 2009】

ここでは、Googleを活用し、エリアを限定してウェブアドを投入し、選挙戦初期においては、知名度の向上とボランティア募集を行い、選挙戦後半から当日にかけては投票に出かけるよう呼びかけていた。

戦略的には、徹底した“Underdog Strategy”。

直訳だと「負け犬戦略」となるが、選挙に限らず、一般的にはマーケットシェアなどで劣勢に立たされている側が取る戦略をいう。そして、Underdog側は、使える資源が限られているため、基本的にはゲリラ的な戦略を展開することになる。

今回のマサチューセッツ州の場合、1972年から連邦議会上院は全てデモクラットが占めてきていて、デモクラット候補のMartha Coakley氏は、盤石な支持基盤の上で選挙戦を展開していた。各種団体(労組やリベラルな市民団体など)の支持を早期に取り付けた上に、ケネディ家やオバマ大統領の支援も受けた。当然、通常のメディアカバレッジも増える。

Brownはこうした状況で、independent votersの取り込みに集中した。というか、当初から劣勢に立たされているのは明らかで、デモクラット優位の州ではメディアには積極的にも取り上げられないわけだから、選挙戦の最初からゲリラ的に展開していくしかなかったともいえる。

このあたりは、ヒラリー優勢の中でオバマが大統領選に立候補した時と状況は変わらない。

裏返すと、Underdog Strategyは、「メインストリームメディアで取り上げられていることだけが真実ではない」と感じている人びとの心理を逆手に取る戦略ともいえる。つまり、「本物はここにある」ということを、ウェブを活用したグラスルーツのゲリラ戦略で、ボトムアップで伝えていく。

実際、今回の選挙では、とにかく40年間続いているデモクラット支配に風穴を開けたい、という理由で、independent voterが動員されたようだから、

マサチューセッツ≒ケネディ≒デモクラット≒リベラル

という通念を何とかひっくり返したいと思っていた人びとの意向をうまく掬い上げることができたことが、Brownに勝利をもたらしたといえる。

*

総じて、Underdog Strategyはウェブと親和性が高い。

ただ、上のように考えると、それは、マスメディアというマジョリティ支持が明確なメディアが健在であればこそ、通用する戦略ともいえる。

しばしば指摘されるように、ウェブの普及と生まれたときからウェブに触れてきた世代が増えて行くにつれて、この先、旧来のマスメディアの影響力は相対的に低下する一方、ウェブの影響力は増していくと見込まれる。

そうすると、Underdog Strategyが想定する「メインストリームメディアと結託した勝ち犬」が明確な形で今後も存在しうるかどうかが、ウェブ活用型Underdog Strategyの今後の有効性を決めることになる。

11月の中間選挙は、「オバマ以後のウェブ活用キャンペーンがどうなるのか」という点でも注目していきたいと思う。