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保守系政治コラムニストの大家 William Safire、死去

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先日亡くなったIrving Kristolに続いて、アメリカの保守系言論人がまた一人他界した。ニクソン大統領のスピーチライターを務め、ピューリッツァー賞の受賞歴もある政治コラムニストのWilliam Safireが亡くなった。享年79歳。

William Safire, Political Columnist and Oracle of Language, Dies at 79
【New York Times: September 27, 2009】

Rapier-Witted Conservative Columnist Safire Dies
【Washington Post: September 27, 2009】

A Political Voice and Wordsmith Who Broadened Conservativism's Appeal
【Wall Street Journal: September 27, 2009】

ニクソン政権が終了した後は、Safireは長らくNew York Timesで政治コラムを書いていた。

私がSafireの名前を知ったのは、アメリカの主要紙のOp-Edやコラムは英語の勉強になるよと言われた頃なので、もう随分前になる。それこそ、Russell BakerやBob Greenと同じタイミングで知ったように思う。インターネット登場以前は、こうしたコラムニストやエッセイストの書いたペーパーバックを手にするしかなかった。今とは情報環境が全く異なる。もちろん、当時は、Safireが保守だということも知らずに何となく読んでいたように思う。

上のWSJの記事にもあるが、Safireは“libertarian conservative”を自称していた。そのポジション取りが、一般的にはリベラル紙の中核と見られているNYTで長らくコラムを持つことができた理由なのだろう。実際、Bill Clintonは、Safireの論調を高く買っていたようだ。だから、今日でいう、center-leftのポジションを醸成するのに、Safireの言説は一役買ったことになるのだろう。

Safireが仕えたNixonという人は評価が難しい人で、もちろん、Watergate事件が彼の政治生命の良くも悪くも頂点なわけだが、しかし、そうした個人的な属性とは別に、彼が採った政策は、今から見ればかなり左よりの中道保守路線で、NeoconやReligious RightがGOPを席巻する以前の、あり得べき本来の保守、として振り返られることも多い。

Safireが書き綴った保守は、そういう保守だった。つまり、行きすぎた合理主義に対する反省としての保守主義であり、人びとの政府依存体質を正すような保守主義だった。

それにしても、保守の言論人がどんどん亡くなっていく。残るのはKarl RovesやRush Limbaughのような人物ばかり、という印象が先行するのは、GOPをとりまく言説の傾向としてはあまり望ましくないように思われるのだが。