408
408
昨日のTwitterとNFLのエントリーについての補足。
トム・ハンクスがアカデミー主演男優賞を受賞した“Forest Gump”の、若いときのForestが、昨日のエントリーで書いた状況のバックグランドとなる情報やイメージを与えてくれることとにふと気づいた。
Forestは知的に若干の障害があったけれど、とにかく一つのことをやり遂げることには長けていて、「走り続ける」ことが得意だった。その脚力を認められて、彼は、地元の大学のアメフト部にスカウトされて、大学に入学する(どうやら、奨学金も出ていたようだ)。
彼がアメフト部で活躍できたのは、アメフトというスポーツが、高度に機能分担、役割分担がなされているからだろう。彼は、ひたすらレシーバーとしてボールを受け取り、タッチダウンを決めることに集中すればよかったし、実際、劇中では、その役割を十分果たし、称賛を受ける
Forestは大学卒業後、軍に入隊してベトナムに出兵し、そこでも所属部隊の救出(仲間を抱えてひたすら運ぶ、の繰り返し)に功績を残し表彰されるまでに至る。
結果的に、これは彼がアメフトで果たした役割と、軍で果たした役割とが、機能的に等価だったことを表しているようにみえる。だから、アメフトの様子が軍隊っぽく見えて、アメフトの選手がなんとはなしに兵隊の一人のようにみえる、というのも、それほど無理な連想ではないように思える。
(ベースボールで、イチローのような好手・好走・好打の選手が好かれたり、バスケットで、マイケル・ジョーダンのように破天荒な身体能力に加えてアーティスティックな技を行える選手に注目が集まったり、あるいは、アイスホッケーの選手は正直よくわからないけど、シュートを打てるフォワードの選手の身体コントロールに驚愕したり、と、他のスポーツが選手の個性が比較的容易に一般のオーディエンスにもわかりやすくプレゼンテーションされるのに比べて、アメフトの場合は、個性の発露よりもチーム全体の勝利の方程式が重要、その意味で「戦略」が重要と思われる、ということ)。
*
ところで、上で書いたことは、別にForestは走ることしかできなかった、といって彼を蔑むつもりは全くないので、念のため。むしろ、“Forest Gump”は、たった一つのことでもそれにこだわり続ければ何か高みに達することができる、と勤勉実直なタイプの、その意味では、南部的な、アメリカン・ドリームのあり方を示していたと思っている。
劇中、Forestはアラバマ出身として描かれる。アラバマで育ち、その後、アメリカの様々な地域で生活するも、劇中の折り返し点では、必ずアラバマに戻り、そこからまた旅立つ。
アラバマ州は、アメリカの中でもDeep South(深南部)といわれ、南部的文化、というか南部的社会状況が色濃く残っている、全米の中でも特異な地域の一つ。経済的にも決して豊かな地域とは思われていない。
だから、Forestが、スポーツ特待で大学に行き、軍を経て、(彼が望んだかどうかとは関係なく)社会的成功者になっていく、というのは、深南部の人たちには一つの夢なわけだ。
といっても、Forest自身、その成功者であることの意味に気付いていないという点で、この物語は、フェアリーテールになっているのだけど。
*
ついでに、NFL出身で社会的成功者になった、という意味では、長らくGOPの連邦議会下院議員を務めて、この5月に亡くなったJack Kempがいる。
Kempはカリフォルニア出身で、Occidental College(オバマがコロンビア大学にトランスファーする前に学んでいた大学) の頃からアメフト選手として活躍し、プロに入ってからはクォーターバックとして活躍(この間、陸軍にも登録)。その後、NY州選出の連邦議会下院議員として政治の世界に入る。1988年には、GOPの大統領予備選にも立候補していた。アメリカのconservatism の中心的人物の一人だった。
Kempのようなキャリアパスもアメリカの場合はあるわけだ。