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Cass SunsteinのRegulatory Czar(ホワイトハウス内で各種政策の規制内容に関して評価を行う中心人物)就任については、前のエントリーで、上院での承認作業が佳境にあると伝えたのだが、あにはからんや!、承認作業はまだ終わっていなかったようで(前のエントリーからほぼ二ヶ月が経過しているので正直驚いている)、彼の近況を伝える以下の記事では、一応、今月中に完了予定ということだ。
Sunstein's Ideas at Work in U.S. Policy
【Wall Street Journal: July 6, 2009】
Sunsteinは、OIRA(Office of Information and Regulatory Affairs)のトップに就任が予定されている。行動経済学の観点から、政府の規制について、政策ゴールを誘導するような「効果」について検討する。また、cost-benefit analysisの観点から、政策の「効率性」についても見直す。こうして、各省庁からホワイトハウスに上げられてくる政策(中身は法律と予算)についてスクリーニングを行うことになる。当然、昨年までとは異なる「評価軸」となるのは必至であるから、このフィードバックが数年繰り返されることによって、政策立案の発想そのものが少しずつSunstein色の強いものに変わっていくことが見込まれる。
(このあたりの、彼に期待されている役回りについては、前のエントリーでも記しているので、関心のある人は参照のこと)。
今回の記事で付加されている内容としては、時節柄、というのは、Sotomyor氏の最高裁判事承認作業が間近に迫っている時期という意味だが、Sunstein自身が近い将来、最高裁判事候補になる可能性があることを示唆した部分が最後にある。
もっともこのあたりの任命=人事に関しては、常に流動的なので、そのときが来てみないことには判らないというのが実態だろう。ただ、現状の最高裁が、HarvardやYaleの、東海岸のトーンで多数派が形成されていることを思うと、(Sunstein自身もHarvardの卒業生ではあるが)シカゴ大学のトーンが最高裁に注入されるのは、大きな変化だと思う。シカゴの「法と経済学」の重鎮であるRichard Posnerはかつて最高裁判事候補になりながらも、彼の考え方が(リベラルからすると)過激すぎるとして最高裁判事になるのを逃しているので、Sunsteinが加わるとすれば、興味深い最高裁になるようにも思う(といっても、まずは、regulatory czarとしての承認が先決だが)。
最高裁のことを気にするのは、先日の、Ricci裁判の判決の結果、いわゆる「市民権」は単なる「特権」に過ぎないのか、という議論さえ出てくるため。
Are All Civil Rights Special Privileges Now?
【Slate: July 2, 2009】
最高裁の決定によって、「基本的人権」が「特定のグループのみに適用される特権」へとすりかえられてしまう、そういう力を最高裁は持っているから。
Sunsteinは、オバマへの政策思想への影響という点で注目してきたので、そろそろきちんと公人として登録され、その采配をふるって欲しいところ。