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junichi ikeda

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アメリカ新聞業界の秘密会議?

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May 31, 2009 09:06 jst
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アメリカの新聞社大手20社のトップがシカゴで業界団体主催の会合に出席し、newspaper business将来について話しあったという。会合自体は、新聞業界団体であるNational Association of America(NAA)が主催したもの。

APが次のように伝えている(APもこの会合には出席)。

Newspaper execs meet to discuss Internet options
【SFgate: May 28, 2009】

実をいうと、この会議のことを最初に知ったのは、上のAPの記事からではなく、以下のサイトから(普段最初に目を通す、NYTやWSJ、WP等ではこのことを目にしなかったので、少し気づくのが遅れた)。

Shhhh. Newspaper Publishers Are Quietly Holding a Very, Very Important Conclave Today. Will You Soon Be Paying for Online Content?(The Atlantic)

Newspaper execs treading carefully on antitrust laws
(Nieman Journalism Lab)

Newspaper Publishers Hold Secret Confab On Charging For Web Content
(paidContent.org)

Secret Newspaper Cabal Agenda (Sort Of) Revealed!
(All Things Digital)

いずれもいわゆるnewspaper siteではない。The Atlanticはリベラル系の政治・文芸雑誌、Niemanはハーバードのジャーナリズム研究機関、paidContent.orgはdigital media専門の情報サイト、All Things DigitalはWSJのグループ内のデジタルメディア専門サイト。いずれも所属する(もしくは契約している)個人のブログ形式で情報が提供される

NAAのシカゴ会合の内容については、あまり明かされていない。というか、基本的にはoff-the-recordで外部には情報をださないようだ。上のブログ群の記述によれば、この一年ほど継続している新聞業界の経営的低迷についての対処が検討されていて、とりわけ、インターネット上の情報提供についての有料化方法について議論・検討を行ったようだ。

Niemanのブログが触れているとおり、ただし、これはカルテル=価格協定の共謀会議、に当たる可能性があって、その分、デリケートな扱いをしている、というのが一般的な捉え方のようだ。たとえば、以下のSlateの記事。

Collusion Course
【Slate: May 28, 2009】

有料化は、newspaper関係者のあいだで、抜け駆けするものをゆるさない、という振る舞いをするためには、反トラスト当局(司法省やFTC)から反トラスト法免除の規定をもらわねばならず、この行為自体が政府と協定を結ぶことにつながり、政府から独立した「第四の権力(the fourth estate)」としての地位を危うくする可能性がある。

まとめると、業界もマジメに悩んでいる、ということ。

とはいえ、改めて「メディアは自分事実については報道しない」という不文律を思い出した次第(そう思うと、AP伝を掲載しているSFgateが、現在、紙の新聞の継続の瀬戸際に立たされているSan Francisco Chronicleのサイトというのは、皮肉を感じる)。

もっとも、「メディアは自分事実については報道しない」といっても、これはメディア企業も普通の企業と同じ存在だ、というのが確認されるだけのこと。だから、既存マスメディアのジャーナリズムはだめなんだ、とまではいわない(こういう非難の仕方は、アメリカではリベラルのジャーナリズム集団から必ずあがるけれども)。

ただ、「メディアはメディア自身、とくにメディアの経営については語らない」という「メディアの盲点」が存在することを強く意識しておくことは何かと有益だろう。

同時に、こうした「メディアの盲点」を指摘する、つまり、ジャーナリズムシステムの盲点を補填し監督する存在として、旧来のメディアとは異なる情報発信団体(今回のことではNiemanやpaidContent)や、フリーランスのジャーナリストの存在が重要であることも再確認できる。この点では、ウェブは確かに既存マスメディアのカウンターになっているわけだ。