American Prism XYZ

FERMAT

329

latest update
May 22, 2009
19:32 jst
author
junichi ikeda

print

contact

329

オンラインの交友関係の価値

latest update
May 22, 2009 19:32 jst
author
junichi ikeda

print

contact

今週のビジネスウィークのカバーストーリー。

Learning, and Profiting, from Online Friendships
【BusinessWeek: May 21, 2009】

ウェブの上で形成されたnetworked friendshipをどうやって利益につなげていくか、という試みの紹介。正直、内容的にはそれほど目新しいことはないので、むしろ、どうして今頃こういう特集をしているのか、ということの方が気になる。

全体のポイントは、Facebook、Microsoft、IBM、などで、社会科学系のディシプリンを動員して、ネットワーク上で形成された交友関係をもとに収益化方法を研究・開発中、とういこと。SNSだけでなく、MSやIBMのようなコンピュータ関連の王道の企業もそこに参入している(クラウドのことを考えると当たり前だが)。

動員される社会科学として、sociology(社会学)、microeconomics(ミクロ経済学、なかでも行動経済学)、というのはある意味定石だが、それに加えて、anthropology(人類学)も挙げられている。

sociologyが近代的な意味での「社会」の存在を前提にした学問であるのに対して、anthropologyは、それ以前の人類の集団行動形態に対する学問。社会以前の、よりプリミティブな段階での集団行動の知見を援用しようとするのは、ウェブの上での関係性が揮発性の高い、ephemeralなものだ、という認識もあるのかもしれない。

(anthropologyについては、留学前にはあまりぴんと来なかったのだが、コロンビア大学では思っていたよりもよく見かけたと思う。マンハッタンのアッパーウエストサイドには自然史博物館もあったので、それも影響しているかもしれない。また、アメリカの場合、国のなりたちとして、北米大陸に外部から移住・移民してきた人々が先住民を征服した、という背景があるので、それもあって、anthropologyは日本で想像するよりもリアリティのあるものに思えた(そういえば、レヴィ・ストロースの『神話論理』は基本的にアメリカ大陸先住民の「神話」の分析だし)。)

肝心のウェブ上での交流関係の価値評価については明確には触れていないのだが、全体の印象では、「繋がり」は一種の資本だ、と言っているように読めた。そう考えると、LTV(Life Time Value)のように、「これだけの属性の人たちとこのような関係性を持った人」は「これだけの潜在価値がある」という言い方を定式化しようとしているようにも見える。単に加入者数を誇るのではなく、その含有価値を明確にする、という感じか。