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December 10, 2008
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junichi ikeda

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政争:Democrats vs GOP

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December 10, 2008 18:02 jst
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11月の選挙結果以来、足下の不況という「苦境」に対して、すわお国の一大事とばかり、超党派的な対応をしていて、アメリカの政治はさすがだな、と思っていたのだが、現実には、そんな生やさしいことばかりではなく、ガチンコの政争が繰り広げられていることを痛感させられるニュースが続いた。

一つは、オバマの後任となる上院議員(Senator)を選ぶ権限をもつBlagojevichイリノイ州知事(Governor)が、後任議席を売りに出していたという嫌疑で、FBIに逮捕されたこと。

もう一つは、(これとは随分スケールは小さくなるけれど)下院の担当委員会(Energy and Commerce Oversight subcommittee)が、FCCの委員長のKevin Martinに対して委員長権限の濫用によって委員会運営が滞っていることを叱責するレポートを公表したこと。

前者は、FBIを管轄するブッシュ大統領府=GOPによる、デモクラットへの挑戦。知事の逮捕に当たっては、FBIは盗聴も行っていたようなので、その盗聴記録の中に、オバマとの会話もあったのではないか、そこからオバマも何らかの関与をしていたのではないか、というのが、報道関係者の中で囁かれ始めている。もちろん、オバマはそのような事実はないと否定しているが、しばらくの間は、その嫌疑を報道側がもっているという前提で、外部とコミュニケーションしていかなければならない。これはやはりやりにくい。

一方、後者のFCCの方は、2006年に下院の多数派になったデモクラットが、ブッシュ大統領からFCC委員長として指名されたKevin Martinの委員長としてのあり方に、議会の監督権限を使って、内部監査を進めたもので、約一年の検討を経て、Martin委員長を叱責する内容のものが提出されている。

FCCについては、私も一次情報ソースの一つとして注意していて、とりわけ、多チャンネル状況をまとめた年次レポートは毎年一通り目を通しているのだが、昨年から、本来それが発表される時期であるにもかかわらず、FCCのサイトにアップされず、おかしいな、と思っていた。今回の、内部監査レポートでは、その多チャンネルレポートについても触れていて、ケーブルの料金体系をパッケージ型(複数のチェンネルをセットにして販売)からアラカルト型(一つ一つのチャンネルを個別に販売)へ転じさせるために、多チャンネル市場の集中度に関する情報を「操作」しようとしたが上手くゆかず、その結果、レポートの公表をずっと差し控えていた、と報告されている。当該レポートは、議会への報告義務があるため、下院の担当委員会からすれば、提出されて当然のものだった。

二つのニュースからわかるのは、党の対立は根深いということ。とりわけ、イリノイのケースは、下手をすれば、オバマにまで累が及ぶことを考えると、とてもシビアな事態だ。大統領就任まで残り40日間程度とはいえ、依然として彼はPresident-elect(選出された次期大統領)でしかないことを痛感した。オバマが就任すれば当然FBIも彼の指揮下に入るので、その前にことを起こした、と見るのが妥当なところだろう。

そして、これはやはり二党の対立、政争なのだ、と捉えるなら、なぜこのタイミングか、ということはどうしても気になってしまう。最悪の事態はオバマも本件に巻き込まれることだが、そこまでいかなくても、これから発表予定であった、オバマ政権の目玉である、エネルギー・環境関連の担当者の発表が遅れたりすることは免れないだろう。

トリビューンのことといい、イリノイ、シカゴ、の政治背景は、しばらくの間、注目しておいた方がよさそうだ。