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Google Will Let Employees Sell Vested Options
【December 13, 2006: Wall Street Journal】
Googleが従業員に対して提供したストックオプションを、投資銀行などの参加するオークションで売買する仕組みを導入するのを試みるようだ。
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投資銀行としては、モルガンスタンレーが参加することは公表されており、これに幾つかの投資銀行、ブローカーも参加してオークションシステムを稼働させるようだ。
上場前、あるいは、右肩上がりが確実視されているときには、ストックオプションには強いインセンティブが働く。
研究開発型の企業の場合は、従業員たちが自らのアイデアを積極的に企業に供与することで、知識や知恵のケミストリー(融合)を誘発することが、市場を先導するには不可欠の要素になる。成長の確実性が従業員にも実感できるときには、こうした行動をも自明視できる。
しかし、ひとたび成熟段階にはいると、ストックオプションの魅力は落ちてくる。
最近であれば、サーチエンジンの開発が遅れ株価が低迷してきたヤフーで、従業員の流出が始まっているという。あるいは、マイクロソフトもこの数年間、そうした状態にあるという。グーグル上場前に、多数の若手技術者や管理職が、マイクロソフトからグーグルに流れた、という話はアメリカにいたときにもよく聞かれた。
だから、グーグルが、ストックオプションの指定先第三者買い取り策を導入しようとすることも、おそらくは、グーグル内部でも成長予測に対する戸惑いが少しずつ現れてきた、ということの徴候なのかもしれない。
しかし、それにしても、グーグルというのは本当に勇猛果敢な組織だ。市場を変えるだけではなくて、組織構造も変えようとする。しかも、この場合、労務管理の問題と株価の問題と投資銀行との関係性の問題を全て含んでいる。加えて、システムとしては、徹底的にオークション=自由競争市場、を信じているわけで。
上場時も、テクノロジー企業であるにもかかわらず、クラスA、クラスB、という支配権の軽重の異なる株式を導入したり、自信の上場プロセスにもダッチ・オークションを利用したりと、この人たちは、本当に西海岸流の、スタンフォード流の、「組織とインセンティブの経済学」を信奉しているように見える。この、組織構造にまでイノベーティブであろう、というのは、なかなかやろうとしてもできるものではないから、敬服してしまう。
金融というか、資本の流れとしても興味深いのは、指定された金融機関が、株価回復の間と従業員のオプション行使の間のタイミングのズレを吸収するためのバッファーとして機能するところ。いわば、手形を期間前に割り引いて現金化するようなもの。
話は少しずれるかもしれないが、ベンチャー投資の在り方として、出口戦略に上場だけではなく、大企業による買収、という選択もすっかり定着したが(たとえば、GoogleによるYouTubeの買収)、それに近いような、「あ、そう来ますか」という感じがする。
つまり、資本の流れとしては一本なのだが、それを、企業と銀行と市場とでどう分け合うか、そして、誰が不明なリスクについて負担し、だれがその不明なリスクに由来する(ハイ)リターンを享受するか、ということ。
あらためて、シリコンバレーというところは、技術だけではなく経済活動・資本活動まで含めて、実験場であることを再認識させられる。