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トリプルプレイで欧州を先導するフランス

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How France Became A Leader in Offering Faster Broadband
【March 28, 2006: Wall Street Journal】

フランスのBB業界の話。フランスは欧州のトリプルプレイのメッカ。

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フランスは、回線のアンバンドリング開放に早くに手をつけたため、今では、欧州有数のADSL普及国になっている。フランステレコムのMaLigneTVやIliadグループのFreeというサービスが普及を牽引している。

これらADSLサービスは、基本的に、テレビ放送の再送信+VOD、からなっている。おもしろいのは、テレビ放送の再送信には、フランスの衛星放送であるCanalSatelliteやTPSといったプラットフォームがそのままのっていること。だから、ADSL回線を提供している会社のサービスは事実上VODとなる。いずれも、トリプルプレイ(電話、テレビ、インターネット接続)を提供している。

で、欧州の場合は、EU統合によって、市場の相互参入が奨励されている。だから、ある国では独占的地位をもっている旧国営通信会社が、隣の国では新規参入事業者であるという事態が普通になる。フランステレコムやドイツテレコムが典型だ。フランスの場合であれば、テレコムイタリアのAliceというADSL事業者が参入を果たしている。

いくつか、日本と異なる要素としては、

●フランスは地上波テレビは基本的に一つの局が全国をカバーしている(日本のように地域免許を系列化していく、ということはない)
●フランスでは、最初からいわゆるハード・ソフト分離がなされていて、伝送部分はフランステレコムの子会社が担ってきた。だから、放送局は、波の利用権を得た制作+編成会社と思えばよい。
●カナルプリュスという有料チャンネルが、衛星やADSLなどメディアによらず番組を提供することに成功している。さらに、テレビ番組、映画制作にも早くから力を入れてきた。

というところか。もっともイギリスの地上波テレビ局のようなマストオファーの義務はないから、放送局のコミットメントはどう取り付けるかは、新しいメディアの立ち上げには常に重要になる。

とまれ、日本の直接的な参考にするには状況が違いすぎるけど、ある条件を変えたらこんなチャンネル生態系ができるんだ、ということを実感するには、欧州の話はおもしろいと思う。つまり、思考実験の対象として捉える、ということ。可能世界を見る、といってもいい。

WSJで取り上げたのは、アメリカでVerizonなどの地域電話会社が光ファイバによる疑似ケーブルテレビサービスを始めているからだろう。アメリカの動きはアメリカの動きで改めて書くことにしよう。