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情報通信が21世紀の国土軸になる?

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省庁再々編、政府・与党が本格検討へ
【January 9, 2006: Yomiuri Online】

IT戦略会議の動きを一本化するために、総務、経産、文科、の三官庁にまたがる行政業務を一本化し「情報通信省」を設置。これにあわせて、省庁再編を再度行い、行政業務のリストラをさらに進める。同時に、道州制を検討し、行政の効率化を進め、自律単位を道州にまで広げ、東京一極集中の弊害も取り除く、・・・。

・・・という構想が公にされてきた。

*****

このサイトの趣旨からすれば、最初に指摘しなければいけないのは、「通信と放送の融合」というのは、このような21世紀型の国土軸のための手段、前提条件に過ぎない、ということ。だから、とりわけ劣勢に立たされていると思われている「放送業界」の方々は、これから竹中総務相が行う検討が、BSのアナログからデジタルへの変換や、地上波デジタルのように、「放送業界」の内輪の案件としてはすまない、ということをまずは認識しないといけない。

もちろん、竹中総務相が自ら取りしきる「通信と放送の融合」に関わる検討会議を、首尾よくスタートさせるために、一種のPR戦略として発言しているようには思われる。しかし、それを同時に自民党執行部の要職の面々が認めているあたりが、(たとえ、初発の動きとしてはIT戦略会議のようなローカルな動きであったとしても)既に、日本の情報化が、今後の政治利権を左右する場になってしまったことを物語っているように思う。

つまり、かつて、四全総、五全総、というように、国土庁が音頭を取りながら、実質的には建設省、運輸省を中心に、国土開発という利権の分配をめぐって、政治が展開されていた。赤字国債の発行を是認することで財政にも大きな影響を与えていた動きが、2000年代も折り返し地点に入った今日、情報通信を軸にすえたものに様変わりした、ということだ(もう一つの軸は「環境」だが)。

行政サービスとITが結合することでこのような動きが生じるのは、前回の省庁再編の際、自治省に郵政省の情報通信関連セクションが組み込まれることで、既にシナリオ化されていたことだけど、それが本格化してきているわけだ。財政支出を圧縮する「小さな政府」の実現には、行政業務の効率化が不可欠で、それをITで行う。しかし、ITは本質的に広域展開が可能であるため、その整備とあわせて、行政の意思決定ユニットをも変革しようとするもの。もちろん、同時に、「監視社会論」としてしばしば指摘されるように、セキュリティ確保も、IT普及ののろしとなる。

そして、こうした社会的大儀を、最初にメディアを通じてぶち上げることで、メディア(新聞、テレビ、など)からの抵抗をあらかじめ封じようとするものだろう。なぜなら、わかりやすい正論、社会的大儀は、ポピュリズムの背後には常に必要で、マスへの到達を是としているメディアからすると、こうした言説自体を自ら否定するのは、極めて困難だから。

NHK改革は、報道というジャンルで新聞業界に影響を与えることは必至だし、仮にNHKの一部が民営化されれば、それが有料放送であれ、広告放送であれ、既存のテレビ業界への影響は免れない。少なくとも広告費については、既に成熟産業化しているわけだから、(何か抜本的な改革とか、天変地異でも起こらない限り)ゼロサムゲームを展開することは免れない。

さらに今度の省庁再編は、文科省も対象にしているあたり、著作権法を代表とする知的財産法にも手が入れられる。そうすると、文化振興の根幹にもメスが入り、制度的に保護されている、著作隣接権(放送や出版社の保護)や再販制度(新聞、出版がからむ)にも、原則論からみた検討が必要になることは必至だろう。

だから、放送業界のみならず、メディア業界はこうした正論による攻勢に対して、自らの論陣を張っていくことが必要になる。

ということで、情報戦の狼煙が上がったのだ。