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Paramount May Sell DreamWorks Library to Soros
【January 7, 2006; Wall Street Journal】
パラマウントがドリームワークスを買収する話が先日発表されたが、その買収資金の調達にヘッジファンドの神様であるソロスが登場するかも?という話。
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パラマウント(バイアコム傘下のハリウッド映画メジャー)が、ドリームワークスの映画アーカイブをソロス経営のPE(Private Equity)ファンドに売ることで買収資金の補填を行う模様。
ドリームワークスには、GE傘下のNBCユニバーサルも買収オファーをしていたのだが、最終的には買収価格が折り合わず、ドリームワークスの希望にかなう、7億7400万ドル(約800億円)を提示したパラマウントが、電光石火のごとく、ディールを成立させた経緯がある。ただし、同時にドリームワークスが抱えていた有利子負債を8億4000万ドル(約900億円)も引き受けることになっていた。
その時点で、パラマウントの提示額は高すぎるというのがWall Streetの見方の大勢だった。そのため、買収資金の調達を金融機関に求めると見られていた。それがソロス・ファンドということのようだ。
ライブラリーには、オスカー受賞作の“Gradiator”や“American Beauty”が含まれるわけだけど、それを販売して10億ドル程度を調達したいというのがパラマウントの意向のようだ。販売しても、その間の収益の一部は著作権料として請求する予定だし、数年後には買い戻すオプションもつくようだ。販売条件は流動的。
パラマウントからすれば、ただ単にライブラリーを資産として持っても、それは短期のキャッシュにならないので、できるだけ早めにキャッシュ化するのが狙い目の一つ。これは、売れて初めて価値が実現する無形資産、知的財産としては、どうしても必要な作業。ライブラリーは資産計上されても、回転しなければ、むしろ遊休資産としてネガティブに働くから。
そして、もう一つの狙いが、スピルバーグの確保。パラマウントは、近年業績が低迷しており、現在、建て直しの真っ最中。その意味では、観客動員が見込めるビッグネームの取り込みがどうしても必要だった。
とはいえ、近年のハリウッドは、エージェントが主導権を握り、著名な監督、俳優、脚本家、など、映画製作に必要なリソースは、ハリウッドメジャーから見れば外部化されている。そのため、観客動員を見込めるビッグネームを取り込むことは難しくなっていて、フリーのプロデューサーが著名な俳優と組んで製作を進めながら、ハリウッドメジャーに、知的所有権をパッケージで売る、というケースも増えている。トム・ハンクスやジョージ・クルーニーのような、俳優自身がプロデューサーになってキャスティングも固めた映画企画に、ハリウッド・メジャーがリスクヘッジの点からディールをのんでしまうことも多い(そして、それらが必ずしも興行的に成功するわけでもないのも、よく知られたところだが)。いずれにしても、こうした、ハリウッドのディールについては別途考察したいと思う。
今回の買収は、ひとえに、今後新たに公開される映画の興行成績を伸ばすことで、パラマウントのオペレーションレベルでのキャッシュフローを拡大したいというのが主軸。ライブラリーのような(ある程度価値の見える)資産は、即時キャッシュ化して、資産を圧縮し、その分リターンを大きくしようとするもののようだ。
ということは、スピルバーグがそれだけ別格だ、ということだろうか。
このこと自体は、知的財産の源泉は「人材」で、その価値をどう評価するか、という軸でもいろいろと考えさせられる。こちらも、機を改めて考えてみたい。