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Phone Companies Set Off A Battle Over Internet Fees
【January 6, 2006; Wall Street Journal】
ネット上のサービス事業者から高速料金を徴収しようとする、大手インターネットプロバイダーの話。
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ISPならびにインターネットのバックボーンを供給する、ベライゾンなどの電話会社が、インターネットでサービスを提供している事業者(GoogleやVonageやSkypeなど)にも、ネットの高速化やらにかかる費用の一部を負担しろと請求し始めている。
そう電話会社が主張する背景には、アメリカらしく、やはり株価の問題があり、今年に入って、時価総額で見ると、電話会社は横ばいもしくは下降、なのに対して、Googleを筆頭にインターネット上でサービスを提供している事業者は大幅に上昇している。
株価ならびに時価総額というのが、理論上は、将来の収益見込みによって高低することを考えると、同じインターネットに関わる企業でも、株式市場は、インフラ系企業については厳しく、ネット系には期待をもって、判断している、という解釈になる。
とはいえ、日本も同じだけど、トラフィックが増加すれば、ISPはネットワークの増強をしないとユーザーを維持できないので、設備投資は必要になるが、その分のコストを全部、ユーザーに払わせたら、価格競争に勝てない、・・・、という構図の中で、そもそもネットワークの負荷をあげるようなサービスを提供している事業者がいけない、彼らにこそ、不足分を支払わせるべきだ、というロジックのようです。
無理があるロジックのようだけど、一方で、2000年代に入ってから、マルチプラットフォームの経済学というのが出てきていて、そこではプラットフォームを提供する事業者は、そのプラットフォームを介して、商品を売買しあう利用者に対して、双方にそのプラットフォームの費用を負担させると、市場がうまく立ち上がらず、一方の利用者の方に、非対称に費用を負担させるのが合理的、という学説も出てきている。
この理屈に従えば、あながち、電話会社が言っていることも無理ではないのだが。現実的には、FCCがどういう判断をするかによるのだけど、ブロードバンドの配備上は、電話会社は従来巨大すぎた、ということで、いささか不利な扱いを受けているのも確か。同じブロードバンドサービスを提供しても、ケーブルは回線を同業他社に開放する義務はないのだが、電話会社は開放しなければならない。去年の初夏の、最高裁判決(BrandX訴訟)でもそうしたルールが追認された。
これは、一種の競争政策で、電話会社の地域独占を崩し、インターネット、ブロードバンドの配備においては、できるだけ競争的な状況を作り出そう、としている。その対抗馬の筆頭がケーブルだが、そのほかにも、無線LANの提供や、電力線インターネットの配備などにも、FCCは関心を持っている。特に、日本に比べ、携帯の普及が遅れて、その一方で、VonageやSkypeのようにVoIPがスタートしているアメリカだと、無線電話サービスすら、携帯ではなく無線LANが主導する可能性がないわけではない。大体、Nextelが始めたトランシーバーのようなWalkie-Talkieも、中継網はインターネットを使っていたわけで、新興の携帯電話会社はコストダウンのためにインターネットを活用していたわけだし。
とまれ、しばらくはFCCの判断を待つ状況が続きそうだ。