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Icahn Doubts Whether Google Is 'the Best Partner' for AOL
【December 20, 2005; Wall Street Journal】
いまやすっかり物言う株主になった、Carl Icahnが、Time Warnerの株主として、AOL-Googleのディールは、株主価値の最大化に尽くしていない、株主価値を損ねる、と大批判。
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面白いのは、彼の公開書状 によると、もの言いを付ける根拠として、Ichanが取り上げているのは、Goldman Sachsのアナリストレポート。そこでは、戦略的パートナーとしては、eBayや IAC/InterActiveの方が価値がある。Googleといわず、Yahoo!やMicrosoftと比べて、eBayなどの方が、オプションバリューが上がる、といっている。
これは面白い。
Goldmanのレポートを見てないから中身は推測するしかないけど、オプションバリューが上がる、ということは、eBayらと組む方が、将来大化けする可能性が高まるから、その分、株価が上がる、っていうこと。想像するに、eBayあたりと組めば、いわゆる広告型と有料型の二重の収益機会を得られるからというのが理由の一つ。オークションといってもバックヤードのシステムは、課金インフラになるから、バトルロワイヤルが当たり前のアメリカのIT業界だと、eBayとAmazonはほぼ同一線上で競合している。
で、もう一つの理由は、株式を供出せずに、単に契約ベースで検索エンジンを選ぶことで、Google、Yahoo!、Microsoft、に対して等距離外交をとることで、検索エンジン収入の分け前で、いい条件を得られるから、ということじゃないか。とりわけ、Googleを最大の敵とみなしたMicrosoftからだったら、いい条件を得られるはず。
そうした事業の将来の不確定性がむしろ投資家の間で憶測を呼び、その分、オプションバリューが上がるということだろう。これは、日本の経営者や普通の投資家だと出てこない発想だよね、きっと。
何たって、シェアアップによるスケールメリット効果で目の前の収益を上げるよりも、長期的な戦略オプションを複数持っていた方が、その分、不確定性が上がり(≒ボラティリティが増え)、株価が上がる→時価総額も上がる→企業価値も上がる、っていうストーリーのわけだから。
そうすると、単純に言うと、オペレーションの戦術的判断と、ファイナンスの戦略的判断とで、企業はジレンマに陥ることもあるってこと。それから、安定だけでは企業価値はあがらない、ってこと。
いそいで付け加えると、それは、今日の投資家が、大なり小なり、ヘッジファンド的な、未来の株価と今の株価の間のさや取り(アービトラージ)にかまけるルールで勝負をしていることと大きく関係している。
で、それが前提だと、未来の不確定性、不安定性を、可能な範囲で多く取り入れている会社が、株式市場で評価されることになる。しかし、これは短期で相当の報酬が得られる経営者じゃないとやれないよねぇ。