完全な結果が出るにはもう少し時間が掛かりそうだが、今年の大統領選は、驚いたことに、トランプ圧勝、カマラ惨敗、で終わった。
驚いた、というのは、激戦州でカマラが今のところ、一矢も報いることができていないこと。正確には、ネヴァダとアリゾナは結果待ちだが、それもトランプが優位なまま開票が進められている。
事前の予想では、トスアップの接戦、ということだったから、激戦州の開票結果もギリギリまで待つことになると踏んでいた。4年前であれば、ジョージア、アリゾナ、ペンシルヴァニア、ミシガンで、開票率98%くらいまでどうなるかわからず、息を呑む展開だった。
特にペンシルヴァニアは、開票当初は完全にバイデンが劣勢に立たされており、あー、これもうトランプで決まりかぁ、と思ったのだが、その後、バイデンが、大丈夫、これから都市部が開くから、郵便投票も集計されるから、といって支持者に対して耐えるよう訴え、実際、終盤、驚きの「末脚」で、バイデンが逆転し勝利した。
ジョージアもギリギリまで集計していたので、とにかく、複数の州で集計が同時並行で進み、結果がどうなるか、ジリジリしていたのを覚えている。
もっとも4年前も、投票日直前の支持率調査では、バイデンが明らかに優勢、という結果だったので、思っていたほど票が伸びない状態が続いて、ニュース番組のアンカーたちは皆戸惑っていた。
その時も言われていたことだが、トランプの支持率調査はどうも「3%程度」過小評価されたものになっているという見立てがあった。そう考えれば、激戦州でデッドヒートが最後まで繰り広げられたのも理解できた。
もちろん、そうした「支持率の過小評価」は調査会社からすれば反省点であるわけで、この4年間の間に、いろいろと修正が施され、今年の選挙戦では、ようやくトランプの評価が「練れてきた」と言われていた。
それでも、まだ、トランプの支持率は過小評価されていたようだ。今回の結果についても、投票日直前の48%のトスアップに3%を上乗せすると大体トランプの得票率になっていた。
ということで、引き続き調査会社の課題となった。といっても、もうトランプが出馬することはないのだが。
ともあれ、惨敗したカマラについては、すでに民主党内で戦犯探しが始まっている。候補は、カマラ本人、バイデン、ティム・ウォルツ、ペローシ&シューマー、その他老人政治家、等々。
7月のバイデン降ろしからのカマラへの候補者交代劇が、あまりにもイレギュラー過ぎるので戦犯を探すのは難しいのだが、ただ、トランプの圧勝の中身を見ると、これは民主党そのものの構造的問題とも言えるため、いずれにせよ、今後の立て直しが難しそうだ。
というのも、結局、民主党が自分たちの支持層だと信じてきた「オバマ連合」がどうやらもう実態のないゾンビのようなものだとわかってしまったことが大きい。つまり、マイノリティ、若者、女性、都市部エリート、の連合がばらばらになった。
特に、ラティーノ、それもラティーノの男性の離反が大きかったのは、多くの報道機関が伝えていることだ。オバマも非難していたが、黒人の男性もトランプに一部、流れていた。結果として、2016年のときに騒がれた「ホワイトワーキングクラスの離反」がより拡大して、人種問わず「ワーキングクラスの離反」が今回、明らかにされた。
これはつまり、「働く現場の変化」に対して民主党の上層部が適切な想像力を働かせて効果的な処方箋やメッセージを生み出すことが困難になっていることを示唆している。ある意味、民主党は、議会トップのペローシやシューマーといった高齢政治家たちが、現実のアメリカ社会を見ていなかったから、ということになりそうだ。だから、バイデンに対して2022年末の段階で再選を思いとどまらせるという判断もできなかった。
要するに、民主党は、自分たちを支持する有権者が誰か、どこにいるのか、わからなくなっていた。で、トランプはその隙をついた。しかも、2020年に負けてからずっとその隙をつくことだけを考えて行動してきた。その差が、でてしまった。
そういう意味で、ことは、カマラやバイデンの責任では済まなくなる。
実際、上院選でも民主党の候補は負けが続き、結局、多数派を共和党に奪取された。大統領も上院も共和党が征したとなると、トランプの閣僚や政府高官の指名人事は基本的に速やかに承認されることを意味している。その意味でも、民主党は大敗した。
今回の選挙でアメリカは、ポイントオブノーリターンに到達してしまったということだ。