アメリカでは1月21日にオバマ大統領による第二期の就任演説が行われたが、その様子を中継したケーブルニュースの視聴者数が激減したという。
Cable News Networks See Big Falloff From 2009 in Inauguration Ratings
【New York Times: January 22, 2013】
今回最も視聴者数を集めたのはCNNで、宣誓とスピーチを中継する間に313万人が視聴した。次いで、MSNBCが227万人で第二位を占め、第三位はFox Newsの132万だった。MSNBCはリベラル系、つまり民主党支持の傾向が強く、対してFox Newsは保守系、つまり共和党支持の傾向が強い。民主党のオバマ大統領の就任演説であるのだから、日頃、リベラルや保守によるコメントを好む視聴者に支持されていることを考えると、わかりやすい結果だ。
しかし、この数字は、前回の2009年の視聴者数からすると、三局ともども激減していることになる。
前回の宣誓/就任演説の時は、CNNでは812万人が視聴した。従って、前回に比べて71%減、つまり今回の視聴者数の313万人は前回の約4割に過ぎない。同様に、Fox Newsは521万人で、今回は75%減、MSNBCは302万人で25%減、ということになる
4年経って大幅に視聴者数は減ったことになる。では、その減った人びとはどうしたのか?ケーブルではなくウェブで見たのか。では、ウェブのどのサイトで見たのか。あるいは、そもそも見なかったのか。見なかったのは、関心がなくなったからなのか。それとも、見なくてもツイートを追えばいいと思ったのか。あるいは、その瞬間に見なくてもいいと思ったのか・・・等。
逃げてしまった視聴者については、いくらでも想像ができる。今のところ、まだそのような分析は指摘されていない(とはいえ、遠からず、何らかの説明が出てくることだろう)。
ただ事実として、ケーブルニュースの視聴者数が激減したということだ。
90年代初頭に世帯普及率で8割を越えたケーブルテレビは、アメリカではテレビ視聴インフラの標準となった。多チャンネルが一つの文化となった。件のケーブルニュースもその中で誕生し、ポピュラリティを獲得していった。
しかし、映画やテレビドラマといったエンタメ映像であれば、DVDを経てNetFlixやAmazonのようなウェブサイトが、ストリーミングでのサービスを始め、既に視聴形態として根付いている。最近では、オリジナルの映像作品をこうしたウェブサイトがハリウッドに制作発注する事態も生じている。
となると、今回のケーブルニュースの結果も、そのようなケーブルからウェブへの視聴形態の変化を反映したものと考えてよいのだろう。
もちろん、オバマのホワイトハウスがウェブを活用したPR活動を普段から行い、ウェブ上で映像を見ることは当たり前になっていることもあるだろう。昨年の大統領選で行われたディベート中継も、CSPAN(議会中継ケーブルチャンネル)のウェブサイトで広くストリーミング中継がされていた。
2009年から2013年までの4年間に生じた、映像視聴のケーブルからウェブへの移行の実体を、今回の就任式中継は図らずも示してしまったのかもしれない。