SOTUをインタラクティブに補うGoogle+ Hangout

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January 25, 2012 10:57 jst
author
junichi ikeda

SOTU(State of the Union)=一般教書演説の後に、オバマ大統領はGoogle+ Hangoutを用いて、アメリカ市民と一種のバーチャルタウンミーティングを行うが、その意義について記したAtlantic Monthlyの記事。

How the Internet Has Become an Outlet for Lonely Teens—and Barack Obama
【The Atlantic: January 24, 2012】

SOTUのライブ中継は、テレビ放送だけでなくホワイトハウスのサイトからも行わるため、もっぱらこのGoogle+ Hangoutの実行も、ホワイトハウスが独自に行うPR機会であるように思われる。だが、そうではなく、むしろ、これはオバマ大統領にとって人々との対話を行うよい機会として、つまり、文字通りのインタラクションの機会として位置づけるべきだという。

大統領就任以前のオバマ大統領は、ブラックベリーを常に携帯し、彼の友人や仲間、スタッフと密に交信をしながら選挙戦や政策過程に望んでいたという。そのようなインタラクションが常時あるからこそ、臨機応変に柔軟な対応が行われていた。しかし、大統領就任後は、秘密保持や警護の関連から自由なコミュニケーションを行うことができなくなってしまった。そのような大統領にとって、Google+ Hangoutを使うビデオチャットによるシステムは、人々の意見や疑問としてフィードバックを得るためのいい機会になる。だから、この記事のタイトルは、ホワイトハウスに囚われたオバマ大統領と孤独なティーネージャーを類比的に捉えるものとなっている。

オバマ以後のホワイトハウスは見た目では外部に向けた発信を各種ウェブのアプリケーションを活用して(YouTubeやFacebookなど)積極的に展開してきたイメージがある。以前留学した時に、前職のブッシュ大統領のホワイトハウスについてジャーナリストに対してすら外部に流す情報を管理しようとする傾向が強いと指摘する四大ネットワークのニュース制作者の講演を聞いたことがあるが、それに比べればオバマのホワイトハウスはオープンにすることに積極的であると思っていた。

しかし、それはあくまでも受け手である人々からの視点でしかなく、そのような場を政策過程の一つのプロセスとしてうまく活用できないか、というのが上の記事のポイントだ。つまり、情報公開によって、確かに情報の出し手と受け手との間で無用な不信を除き、一定の信頼関係を築くことはできるかもしれないが、それだけでは足りない、ということだ。その次のステージに行くことはできないか、というのがここでの趣旨だろう。そのための第一歩として、政府要職にある人物(この場合は大統領)に直接的なフィードバックとしてインプットを与えることが出来るかどうか、というのがさしあたって課題ということのようだ。

だから、ここでの主題は「PRの場から協働機会の場へと(ホワイトハウスの)サイトを変えるにはどうしたらよいか」というものだ。そのため、記事ではその後グループシンキングの(サイバー)心理学的な検討に向かっている。そちらは直接記事を見て欲しい。

(たとえば、グループシンクというと、いわゆる「ワイガヤ」型の、皆で集まってアクティブに議論することが想定されているが、しかし、実際に創造的な作業が行われるのは、オープンスペースよりもプライベートが確保された孤独な状況においてだ、という議論なども引用されている。つまり、創造性のためには何でもかんでもオープンにすればいいというわけでもない、ということのようで、これはこれで興味深い話だ。)

要約すれば、「情報公開後が定着した後、そのパフォーマンスを上げるためにはどうしたらよいか、私たちはウェブの活用の第二ステージにどうやら登っているようだ」ということなのだろう。ホワイトハウスのウェブサイトの利用については、今後、そのような観点から見ていくことも必要になるのだろう。まずはSOTUから、ということになりそうだが。