HuluやNetFlixのストリーミングサービスでは、(従来の地上波ネットワークのように)2000万人が好む番組ではなく、日本のアニメをはじめとして、従来の常識から比べれば遥かに少ない、100万人ぐらいの人が死ぬほど見たがる番組を取り揃えていく、という話。
Animation Gives an Edge to Streaming Services
【New York Times: October 28, 2011】
NYTの記事をいつも通りブラウズしていたら、いきなりハガレン(『鋼の錬金術師』)のイラストが現れてびっくりしたわけだが、要するにコアとなるファンがいるような番組、一般のアメリカ人の視聴者から見たらニッチとしかいいようのないコンテントを取り揃えるのが、HuluやNetFlixのようなストリーミングサービスの方針だという。
ハガレンについて初めて知ったのは、NY留学中のことで、ユニオンスクエアに面したBarns & Nobleの店舗で、アメリカの子供たちが日本のコミック(ドラゴンボールやワンピース等)を座り読み(彼らはどこでも座るw)しているところで、アニメ版の絵を見かけた。確かNYのケーブルチャンネルのどこかで英語吹き替え版も放送していたはず。当たり前だけど、ハガレンが人気のあるシリーズとは当時知るよしもなく。ただ、日本のアニメを特集する雑誌もあるんだくらいに思っていた。
当時はYouTube前の時代なので、アメリカ人の映像接触は基本的にケーブルとレンタルのDVDだった。
ということで、クールジャパンがどうこう言われる前から、一定の数の子供(と大人)の支持が日本のアニメやマンガにあることは、経験としてわかっていた。なので、Huluのような映像プラットフォームが、スティッキーな視聴者を確保しようと思ったら、きっと日本のアニメを使うだろうな、とは思っていた。
もっとも、このNYTの記事を読んでいくと、日本のアニメは、100万人が愛するニッチコンテント分野の一つでしかなくて、その他に、韓国やスペインのドラマも組み込まれている。
アメリカ人の目で見れば、従来だったらケーブルのニッチチャンネルに放送権が売られていたジャンルを束ねる感じだ。細かいところはHuluの契約内容を見ない限りわからないことだが、Huluがケーブルでないことだけは明確なので、そのようにニッチチャンネル群から気になる作品をピックアップしてアーカイブとして加えていくことはできるはず。
そうして、非アメリカ製だが相応の人気のある作品群が用意されていく。そこで、おそらくは、吹き替えなり字幕なりの処理もされていくのだと思う。となると、HuluやNetFlixはスペックだけで言えば、グローバルに通用する映像配信機構を、アメリカ向けのサービスを用意しながら整備していくことができる。
その映像配信機構の部分で、Hulu、NetFlix、YouTube(Google)、あたりを中心に、これにAmazonやAppleが絡む形で競合が繰り広げられていくことになる。このように、アメリカの中でいまだ群雄割拠の状態なわけだが、仮にその状態に一定の方向性が見られるようになると、つまり、アメリカの中での国内予選が終わると、他のウェブサービスと同じように、アメリカ国外にも一気にカバレッジを増やしていくことになると思う。そのタイミングがいつ頃になるのだろうか。そのタイミングには、ブルーレイディスクやゲームコンソールのような、従来のテレビ・AV機器に関わる事業も巻き込まれていくことになることだろう。面白い時代がやって来ることになる。